2019年 和牛 92点
「去年もその前も和牛にはチャンピオン(の票)を入れました。でも(今年は)なんか横柄な感じが和牛に対して感じました。このステージは僕のもの、リサイタルみたいな。なんの緊張感もない。そういうぞんざいなものを感じました。(中略)和牛のような、あんな大御所のような出方して。準決落ちて決勝まで残れなかった。それが腹立つ言うんですよ」
敗者復活戦から決勝に進んだ和牛に対して、「そこまで厳しく言う必要があるのか」と炎上した上沼のコメント。背景として、2018年までの和牛は本格的にM-1対策を練って、ストイックに漫才ネタを磨いていた。しかし結果は、3年連続の準優勝。そこで2019年はガツガツせず肩の力を抜いた自分たちの漫才を突き通そうとスタイルを変えた。
もちろん手を抜いたわけではないだろうが、上沼の目には、M-1という舞台への真剣さが足りないように映ったのだろう。上沼は決勝での漫才だけをみて和牛の緩みを直感的に見抜いていた。
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M-1の審査員が複数人いるのは、複数の価値基準で審査する必要があるからだ。その意味で、自らの視点を決して曲げない上沼はまさに適任だった。点数だけでなく発言もストレートなために物議を醸すことも多いが、じっくり聞き直すと極めて真っ当なことを言っているケースが多い。感情的にコメントしているように見えて、冷静に漫才ネタのポイントを押さえているところは、まさに“プロの審査”である。
言葉の力も強いので、マヂカルラブリーのように数年越しでM-1のドラマを作る上でも貴重な存在だった。本当にM-1の審査員を務めるのが今年で最後だとしたら、その穴を埋められる人は存在するのだろうか。