「実は僕、風俗ってほとんど行ったことがないんです」
田原 取材を進めるうちに、男は何歳まででもセックスしたい生き物なのだなと実感しました。東海林さんだって、まだしたいでしょう?
東海林 ウーン、チャンスがあれば……。実は僕、風俗ってほとんど行ったことがないんです。「トルコ風呂」を1回取材したことがあるくらい。デリヘルもよく知らなくて、この対談の前にネットで検索してみたんですよ。そうしたら、すごくいっぱいお店が出てきて。
田原 サイトにはずらりと女性の顔写真が並んでいたでしょう。そこから好みの女性を選んで、お店に電話して希望を伝えると、スタッフが場所を口頭で案内してくれるんですよ。
東海林 どこに行けばいいんですか。
田原 客の自宅か、ラブホテル(通称・レンタルルーム)が多いようです。
老人が女性に求めるもの
東海林 デリヘルは、いわゆる“本番”は禁止なんですよね。
田原 本番は売春なので違法です。僕が取材したお店では、女性に本番を迫る客は出入り禁止にしたり、女性にも本番しないように指導したりと、経営者が厳しく取り締まっていました。
東海林 本番禁止とはいえ、お客さんの最終的な目的は本番ですよね。本のなかに出てきた経営者の発言でとても印象的だったのが、「(お客さんに)射精していただく」というもので。“射精”と“いただく”の言葉の組み合わせがなんとも(笑)……。
田原 当然ですよ。お客様なんだから。僕は近江商人の末裔なので、幼いころから祖母に「三方善し」の心得を言い聞かされて育ちました。三方善しとは、まずお客さんにとって善し、次に、世間に善し、そして自分にとって善しです。デリヘル経営も決して例外ではない。
東海林 たしかに「三方善し」ですけど……さすがに丁寧すぎませんか? 射精“していただく”って……。
田原 企業はお客様あってこそ、成り立つものです。業種は違いますが、日本航空を再建した稲盛和夫さんの話を思い出しました。日本航空が経営破綻したとき、当時の社員たちにはサービス精神がなく「お客さんを飛行機に乗っけてやる」という雰囲気だったそうなんですね。そこで稲盛さんは「飛行機はお客様に乗っていただくものだ」ということを徹底して指導したと。どんな仕事でも大事なことです。
女性との“心のふれあい”を求めてやってくる人も
東海林 アハハ、そうか、“射精させてやる”じゃだめなんですね。ところで、60歳以上のなかで、射精まで辿り着ける人はどのくらいいるんでしょうか。
田原 2割いるかどうからしいです。
東海林 そんなもんですよね。お客さんにとって、射精はひとつの目標ではあるけれども、女性との“心のふれあい”を求めてやってくる人も多いとか。
田原 そうなんです。老人の多くは、セックスそのものを目的にしているというよりも、女性と触れ合ってなごやかに過ごせればいいと思っている。実際、女性とくっついて肌のぬくもりを感じていれば、それだけで幸せな気持ちになれると思いませんか?
東海林 ああ、癒やされると思います。デリヘルに来る老人たちの女性の好みは、ずいぶんと細かいようですね。胸の大きさ、垂れ具合、毛の濃さ、妊娠線の有無までこだわる人がいるとか……今の老人はすごい! 特に妊娠線はすごい!