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女性たちにとっても、一番の上客は老人

東海林 田原さんは、彼女たちに対してずいぶんと鋭い質問、そんなことまで聞いて大丈夫なの? と思うようなことまで質問していますが、躊躇することはなかったのですか。

田原 相手が政治家であれ、一般人であれ、誰であっても、こちらが本音で話せば相手は心を開いてくれるものです。

 

東海林 僕もデリヘルの取材、してみたいなあ。

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田原 ご紹介しますよ。彼女たちの本音を確かめてきてください。

東海林 ハハハ、ありがとうございます。お気に入りの女性を見つけてリピートする老人が多いそうですね。

田原 女性たちにとっても、一番の上客は老人なんです。優しくて金払いが良いし、なかには毎週利用する老人もいますから。

東海林 谷崎潤一郎が75歳のときに書いた『瘋癲老人日記』という作品がありますね。77歳の老人が、息子の嫁に性的魅力を感じるけど、本人は不能なので彼女の脚に執着していくという話ですが……谷崎の時代にはデリヘルなんてなかったから、女性の脚に頬ずりして欲望を満たすしかなかったのかな(笑)。谷崎なんて可愛いもんだな、ということになりかねない。

老人ホームでも……

田原 老人が欲望を満たす環境があるのは、良いことですよ。最近では、老人ホームでもデリヘルを黙認しているといいます。

東海林 エーッ!? そうなんですか! 老人ホームまで女性が来るんですか。

田原 大っぴらにはしていませんが、利用している入居者は結構いるそうです。

東海林 老人ホームでは、老人同士の恋愛のいざこざが大変だと聞いたことがあります。

田原 そうなんです。揉め事が頻発するので、昔は恋愛禁止の老人ホームが多かったんですよ。

東海林 へー! 高校の規則みたい。

田原 でも欲望を持て余した老人が暴走して、介護スタッフの女性を触るなどの問題が出てきてしまって、すっかり変わりましたね。今は自由恋愛を認めているところがほとんどです。

東海林 いやー、お盛んですね。ここまで高齢男性の話ばかりしてきましたが、高齢女性のためのデリヘルもあるのですか。

田原 僕が取材したときは、女性向け風俗はあっても高齢女性専用というのは存在しませんでした。でも今のデリヘルのシステムに乗せて「高齢者専用の癒やしサービス」を提供することは十分に可能だそうです。

(初出:オール讀物2020年11月号、写真:文藝春秋/佐藤亘。なお、本文中の年齢、日付、肩書などは掲載時のままです)

◆田原総一朗

 たはらそういちろう 1934年生まれ。テレビ局に勤務した後、77年フリーに転身。『朝まで生テレビ!』等でテレビジャーナリズムに新たな地平を開く。

 

◆東海林さだお

 しょうじさだお 1937年生まれ。本誌「男の分別学」他、著作に『タンマ君』『アサッテ君』『サラリーマン専科』『ざんねんな食べ物事典』など多数。

オール讀物2021年1月号

 

文藝春秋

2020年12月22日 発売