日テレ系で水曜の夜7時から放送されている『有吉の壁』のテーマは「MCの有吉弘行(とアシスタントの佐藤栞里)を笑わせる」というシンプルなものだ。
メイン企画となる「一般人の壁」では毎週30人程度のお笑い芸人たちが遊園地やショッピングモール、大学などを舞台にその場を活かしたネタを披露していく。即席のコンビや団体芸も含めて、ウケれば何でもありの異種格闘技戦でもある。そこにはベテランも第7世代も別はない。
「ひな壇トークにたけていることが唯一の正解じゃない」
同番組の総合演出を務める橋本和明氏は、今年5月のギャラクシー賞受賞に際した取材でこんな風に語っている。
「芸人にとって、ひな壇トークにたけていることが唯一の正解じゃないということを示している座組みだと思います。ユーチューバーがエリート会社員より稼いでいたりする時代に、笑わせ方も勝ち方も1個じゃない」(『日刊スポーツ』8月26日)
そんな橋本氏の言葉の通り、当たり前のことだが多くの芸人にも得手不得手がある。
すべての芸人がエピソードトークや話術に長けているわけではないし、そうである必要もないだろう。
「素を出すのが苦手」というかもめんたるの岩崎もそうだし、パーパーのほしのも「基本的に恥ずかしがりやだから、トークになるとみんなの視線が集まるので苦手なんです」と言っていた。
だが、彼らはみな数千人もの参加者のいる賞レースで上位に食い込んでくるような猛者たちだ。もちろん個々人の笑いの好みはあるとはいえ、力を発揮できる場所に置かれたら面白くないわけがないのである。
にもかかわらず、これまで地上波ではなかなか本人たちが納得する形で活躍することができていなかった。その理由のひとつは間違いなく、前述のように地上波で継続的にネタを披露できる場があまりに少ないという現実だった。