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「出会いの失敗者」を生み出したくない

ヤクルト監督時代の小川淳司SD ©文藝春秋

 さらに話題は、「コーチと選手との出会いはとても重要だ」という話になった。実は小川さんの父親は罪を犯した者、非行に走った人たちの更生をサポートする保護司をしていたという。かつて小川さんは父から「罪を犯した者は出会いの失敗者なんだ」という話を聞き、以来、この言葉が常に頭にあるのだという。

「うちの親父は保護司をやっていまして、保護観察の処分を下された人たちに相対したときに、彼らのことを《出会いの失敗者》と思ったらしいんです。生まれつきにして悪いことをしようなんて思っている人はこれっぽっちもいない。周りの環境がそうだったからそういう風になってしまったという人がほとんどじゃないか、と」

 そして、話題は野球に移っていく。

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「ですからやっぱり僕も、新しく入って来た選手が僕と出会ったばかりに、芽が出ないというようにならないように、なんとか頑張りたいんです。実際にはプロの世界というのは芽が出ない人ばっかりですよ。結果的には圧倒的にそっちのほうが多いんです。でも、そこに最善の努力を尽くしたい。一生懸命やることが第一なんだなって思っているんです」

 やっぱり、優しい(笑)。いかにも、正統派のヤクルト人脈だ。はたして、スポーツ紙の報道通り、小川淳司SDが来季のヤクルト新監督となるのか? 自ら「優しすぎる性格で、勝負ごとには向かない」と語る小川さんがチームを率いるとしたら、チームはどのように生まれ変わるのか? 「出会いの失敗者を少しでも少なくしたい」と願う小川さんが再び指揮を執るとしたら、ヤクルトは強くなるのか? 続報を期待して待ちたい。次は「愛ゆえの厳しさ」全開の宮本慎也氏の言葉を紹介したい。

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