レズ風俗はリスクがなく、恐怖も感じない
私は取材でレズ風俗に行ったことがあるんですが、いい体験でしたよ。マッチングアプリや出張ホストものぞいたことはあったけど、知らない男性とホテルで2人っきりになるのは、怖くて抵抗があります。
そういった意味でレズ風俗はリスクがなく、恐怖も感じないし、同性が相手だと罪悪感もない。女性が安全・安心に自分の欲望を発散させる場所があるってことを知れたのはすごく良かったです。
ちなみに私が利用したのは、大阪の『レズっ娘クラブ』というお店ですが、オーナーとも知り合いで、夫も取材したことがあるので面識があり、安心感がありました」
花房さんと話していると、「女だから」「結婚しているから」などという枷をひとつひとつ外してもらえるような気分になる。それは、小説の読後感にも通じる。
《貞操観念や処女崇拝なんて、女を自分の思い通りにしたい男たちに押しつけられた価値観じゃないか。女の中でも、そんなものを無批判に自分の物差しにして、あたしたちのような女を非難する連中が世の中にはたくさんいる。そんな不自由な女たちをあたしは気の毒だと思う。
捨てたほうがいいものを、男も女も背負い込み過ぎている》
“娼婦”という存在の恐怖
「小説家デビューとほぼ同時に結婚したんですけど、年賀状に『結婚おめでとう!』『女の幸せ掴んだね!』って、結婚のことばっかりお祝いされたことにすごく違和感があって。おい、小説家になったことのほうが重要なんだけど! ってツッコミ入れそうになりました。だって結婚はわりと誰でもするけど、小説家デビューってそんなにできないじゃないですか。
不幸な結婚を続けざるを得ない人もいるし、離婚してハッピーになっている人も知っているから、本気で皆“結婚は女の幸せ”と、まだ信じていることにびっくりしました。
女の幸せはもっと幅広くていいし、その中には、多くの男性に求められる幸せがあったっていい。だけど現実には、一人の男と子どもと家の中に閉じこもっていることが女のあるべき姿、っていう圧がいまだに根強い。
そんな世の中の偏見を象徴する存在が“娼婦”であり、女らしさの規範から外れることを許さない人たちにとっての恐怖が、“娼婦”という存在なんだろうなと思うんです」
取材終わりに花房さんは京都のお土産をくださったのだが、その袋から、得も言われぬ穏やかないい香りがした。もしかすると、匂い袋と一緒にしていたのかもしれない。
目上の方に失礼な表現かもしれないが、花房さんはとても奥ゆかしく、可愛いらしい女性だと思った。
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