新型コロナウイルスの流行にともなって、例年1月2日に実施されていた新年の一般参賀が中止された。それに代わって1月1日に公表された「新年ビデオメッセージ」は大変に驚くべき内容だったと思われる。それは第一に、皇后の存在である。
「新年ビデオメッセージ」のこれまでにない画面構成
「新年ビデオメッセージ」は、天皇と皇后が同じ画面に並んで、話すスタイルが採られている。これは、これまでの天皇のビデオメッセージにはない画面の構成である。平成の天皇は、2011年3月の東日本大震災にともなうビデオメッセージ、2016年8月の退位の意思をにじませたビデオメッセージを2回公表したが、いずれも天皇一人が画面に映し出され、そして一人で話すスタイルであった。2016年のビデオメッセージでは、カメラの向こう側に皇后がおり、天皇が話しているのを見守っていたと言われる。しかし、あくまで皇后は画面上では出てこず、その意味では、その映像空間は天皇一人のものであった。ところが、今回は異なった。天皇皇后が並び立っていたのである。
令和は「並んで座る」スタイルで新しさを示された
2019年2月24日、政府主催の「天皇陛下御在位三十年記念式典」において、平成の天皇は「おことば」を述べたが、この時、皇后は一歩引いて天皇の話を聞いており、天皇がページを間違えて読み始めた際には、サッと助けを出した。おそらく、天皇の「おことば」を暗記していたのだろう。天皇は「ありがとう」という言葉をその場で皇后にかけたが、この場面こそ、平成の天皇と皇后の関係性をよく示している。皇后が天皇を支える形なのである。
一方、今回のビデオメッセージはこれとは異なり、天皇と皇后が並んで座っている。このスタイルは、昨年4月に尾身茂新型コロナウイルス感染症対策専門家会議副座長(当時)の「ご進講」を受けたときから継続しているものである。この時も天皇と皇后は並んで座り、尾身氏と机を挟んで会話をしている写真が公表された。そうした姿も平成までとは異なるスタイルであり、新しさを示しているが、今回のビデオメッセージもまさにその延長線上であった。