シリアスな恋愛ものは流行らない、今は明るいラブコメ
「火曜ドラマ」で話題を集めた『逃げるは恥だが役に立つ』、『恋はつづくよどこまでも』、『私の家政夫ナギサさん』、『この恋あたためますか』、『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』は、いずれも明るく元気なノリで胸がキュンキュンするラブコメディ。
高視聴率の恋愛ドラマが数々生まれていた90年代はシリアスな作風のものが多く、人間関係がぐちゃぐちゃドロドロであることも珍しくありませんでした。しかし、現実社会で景気が低迷して暗いニュースも多い近年は、そういうノリは視聴者に受け入れられにくいのかもしれません。
例えば、新垣結衣さんと『逃げるは恥だが役に立つ』の脚本家が再タッグを組んだドラマ『獣になれない私たち』(2018年/日本テレビ系)は、全話平均視聴率が8.7%と低迷。同作はコメディ要素を入れつつも、新垣結衣さんが演じた主人公が、暴力を振るう父親との死別、マルチ商法にハマる母との絶縁といった重い過去を背負っているなど、シリアス要素が強かったこともあってか、『逃げ恥』タッグを擁してもヒットしませんでした。
そういった背景もあり、あまり深刻にならずにポップで胸キュン必至のラブコメディが隆盛なのだと考察できます。
そして、そんな時代が求めているラブコメディの主人公キャスティングに、新海誠作品で、明るい・純粋・健気・芯が強いというパブリックイメージを獲得した上白石萌音さんと森七菜さんは、最適解だったのではないでしょうか。
新海誠作品のヒロイン像が、今の恋愛ドラマトレンドの需要にベストマッチした――上白石萌音さんと森七菜さんが売れたのは、このようにパズルのピースがハマったからだと思うのです。