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Q5.コロナに関して「罰則」をつくるのは正しい政策なのでしょうか?

  政府が、新型コロナウイルスに感染した患者が入院・療養先から逃げ出した場合に刑事罰を科すことなどを盛り込んだ感染症法の改正案を通常国会に提出する見通しのようです。

  今の罰則規定の議論の問題は、病院から抜け出したり、入院を拒否したり、静養先のホテルを抜け出したりした人は「けしからん」という議論ばかりが先行していること。このような弱毒性のウイルスに対してひとたび重い罰則を適用すれば、日本における罪刑のバランスが崩れ、感染症に際してはどれほど人権侵害をしてもよいということになってしまいます。それに、人々はかえって熱があることを隠し、検査を受けなくなるでしょう。

 そして、物事の軽重から言えば、そのような懲罰感情より優先すべきことがある。そもそも国民の払っている税金と保険料によって保険診療が成り立っているという点です。病院が勧告を受けてもコロナ患者の診療を拒否した場合には、保険診療自体を停止するというような罰則があってしかるべきだという議論が欠けていますね。 

撮影/石川啓次 Ⓒ文藝春秋

玉木雄一郎氏の刑事罰に関する主張はそもそもの解釈が間違っている

 病院側は「今は経営が苦しいから、患者の受け入れを拒否できる」のに、なぜ私人が静養先から抜け出した時にだけ、罰則を与えられなければならないのでしょうか。病院にきちんと赤字補填の保証をしたうえで、資源配分の適正化を図るべきです。 

 刑事罰については国民民主党の玉木雄一郎代表が「既に特措法の中に刑事罰はあるんだ」と主張していますが、そもそもの解釈が間違っています。従来の特措法における刑事罰というのは、それこそエボラのような猛威を振るう感染症が拡大し、物資難に陥って国全体が騒乱状態に陥っているところ、例えばヤクザ集団による違法な買い占めが行われ、高額転売の闇市が跋扈したような場合が想定されている。それでさえ、実態を見極め勧告したうえでの懲罰です。家族が心配で会いに行ってしまった、というような個人の行動に懲役を課す発想とはわけが違う。

 日本の法律は私権制限に非常に敏感です。なぜなら、戦争の反省から国家が権力を乱用しないようにすべきだという考え方が根底にあり、国家の都合によって私権を制限することが日本では危険視されてきたからです。

  これだけ市中感染が広まっており、弱毒性の病気にそんな厳罰を科すことが物事の軽重の判断として正しいのかということですよね。