「オラつきの節度」が売上を左右する?
アルファードとヴェルファイアの事例からもわかるように、いくらオラオラ顔のニーズが高まっているからといって、威圧感や攻撃性を高めたデザインにすれば売れるというわけではない。
最後に、周囲を仰天させるほどのオラオラ化を果たした車種を見ていこう。
■三菱 デリカD:5
三菱のデリカといえば、高い四駆性能と、スライドドアの利便性を兼ね備えた「オフロード系ミニバン」である。同カテゴリーに競合する車種がないために、アウトドア志向のユーザーからの指名買いが多く、ターゲット層に合わせて力強いSUV風のデザインで長年支持を集めてきた。異変が起きたのは2019年のビッグマイナーチェンジである。アウトドア系のユーザーに加え、アーバン志向のユーザーもターゲットに取り入れるべく「オラオラ顔」への変身を遂げた。
あまりの「キャラ変」に、当然賛否両論が巻き起こる。メッキグリルが電動シェーバーの外刃に酷似していることから、「四枚刃」などと揶揄されることもあった。
売上においては、モデルチェンジ直後の2019年には前年から1.5倍程度伸ばしたものの、2020年には新型コロナウィルスの影響もあってか、モデルチェンジ直前と同等の水準に落ち着いており、顧客層の拡大に成功したとは言いがたい状況だ。
走破性や利便性といった強みはやはり唯一無二のものなので、昨今のキャンプブームや寒波のなかでその価値が再発見されることに期待したい。
■BMW 4シリーズ
日本では「ブタ鼻」などとも呼ばれ、BMWのアイコンとして知られる「キドニーグリル」。このところ、新車種が発表されるたびグリル部分が肥大化しており、SNSやカーメディアで叩かれたり、批判に対してBMW側が広告で反論したりと、ともかく話題を呼んでいる。
4シリーズではとうとう、グリルが肥大化するあまりナンバープレートを飛び越えてしまった。2021年に発売予定のピュアEVモデル、iXにおいても同様の現象が見られる。
ここまでくると、もはや「オラつき」という概念では捉えきれない、何か新しいマウンティング様式の到来を予感せざるをえない。