先日発表された2020年の乗用車販売台数ランキング(一般社団法人日本自動車販売協会連合会)には、異常な事態が起きていた。
ヤリスやフィットなどのコンパクトな車種が上位を占めるなか、高級ミニバン「アルファード」が90,748台もの売上を記録し(前年から22,043台増)、5位にランクインしていたのである。
500万円台をボリュームゾーンとする高級車が、これほど売上を伸ばすことはとても珍しい。「世間の人たちはそんなに金を持っていたのか」と驚くとともに、「こんなに威圧感のあるデザインの車が売れているのか」と、人々の嗜好の変化に対してどこか引っかかる思いを感じるようでもある。
巨大なメッキグリルや吊り上がったライトなど、アルファードのデザインはいわゆる「オラオラ顔」の代表格である。周囲からの視線に敏感な日本人の間で、なぜこれだけ主張の強いデザインが広く受容されたのか。この1年で、日本に「オラつきたい人」が急増したとでもいうのだろうか。
アルファード好調の陰で売上を落とし続ける兄弟車
結論から言えば、アルファードの売上増加は、「オラつきたい人」が増えていることを示すものではない。アルファード好調の陰で、「オラオラ顔の代名詞」として知られる兄弟車のヴェルファイアの売上は半減しているからだ。
両者はデザイン面が異なるだけで、性能や装備、グレード・価格設定などは同一の車種である。アルファードとヴェルファイアの販売台数を合算すると2019年は105,354台、2020年は108,752台と、大きな変化がないことがわかる。
つまり、「オラついた高級ミニバン」のマーケット規模そのものは変わらないなか、アルファード・ヴェルファイアの比率に変化が生じたわけである。
それではなぜ、アルファードは売上を伸ばし、ヴェルファイアは売れなくなってしまったのか。