バイデン政権が発足したというのに、依然として話題はトランプ前大統領の方に引きずられがちである。毎朝4年間、Twitterを開いては@realDonaldTrumpをチェックすることが日課になっていた人の中には、トランプ・サポーターではないにしても、ある種の「トランプ・ロス」に陥っている人が少なくないのではないか。
「ローズベルト級」の課題に直面するバイデン政権
トランプ・サポーターたちが「MAGA(Make America Great Again)」と連呼しながら連邦議会を占拠してからちょうど2週間。ワシントンではその後も厳戒態勢が続いている。バイデン政権はこうした不穏な雰囲気の中で発足した。アメリカを「おぞましい状態(American carnage)」に追いやったアメリカン・エスタブリッシュメントを告発し、「アメリカ・ファースト」を訴えた4年前の就任演説と比べると、バイデンの就任演説は良くも悪くも型通りだった。大統領としていうべきことを普通に述べた感じだ。
バイデンが直面する課題は「ローズベルト級」だとよくいわれる。それは、1933年に第32代大統領のローズベルトが就任時に直面した問題に比肩するような大問題にバイデンも直面しているということだ。
1933年に大統領に就任したローズベルトは、世界大恐慌、第二次大戦、さらに第二次大戦後をみすえた国際システムの構築に取り組まざるをえなかった。バイデンも、コロナ危機(そして、コロナ不況)、人種問題、地政学的な挑戦、アメリカの国際主義の立て直し、そして「分断がいくところまでいってしまった」感のあるアメリカ政治そのものの修復など、その課題はあまりに重い。まさにローズベルト級の政治手腕が要求されている。
バイデンは「偉大な大統領」になれるのか
ある大統領が偉大な大統領と見做されるためには、単にその大統領の政治手腕が優れているというだけでは十分ではない。すぐれた政治手腕が発揮される歴史的状況があってこそ、偉大な大統領と見做されるというわけだ。ローズベルトはその意味で、偉大な大統領の要件を満たしている。戦後の偉大な大統領としては、他にケネディやレーガンが挙げられるだろう。
さて、それこそローズベルト級ともいわれる問題群に直面するバイデンだが、誰もバイデンのことをローズベルト級の大統領であると期待している人はいないだろう。JFK級でも、レーガン級でもない。