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 やや乱暴な言い方になるが、バイデンは「消去法」で選ばれた感のある大統領だとの印象は拭えない。それは、2019年から20年にかけて実施された民主党の予備選挙を振り返れば明らかだ。これまで「バイデン熱気」といったものは、予備選、本選を通じても一切なかった。

バイデンが「歴史的得票数」を獲得した意味

 大統領選挙の結果にいたっても、8100万票という歴史的な得票数であったにもかかわらず、トランプが7400万票の支持を得たことの方にむしろ注目が集まっている。

 しかし、下院で民主党は議席数を減らし、上院では最終的には多数党の地位を奪い返したものの期待したほどには議席数を伸ばせなかった(=民主党自体が大勝したわけではない)にもかかわらず、史上2位の得票数に達したトランプと700万票の差をつけて勝ったことの意味を見落としてはいないか。

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ドナルド・トランプ氏 ©️JMPA

アメリカ人は「何を選んだのか」

 今回の選挙でわかりにくかったのは、なにをアメリカ人が選んだかという点である。たしかに「熱狂度」では常にトランプが優っていた。しかし、仮にアメリカが「普通であること」を新しい大統領に期待していたのだと仮定すると、バイデンの勝利の意味がよりはっきりと見えてくる。

 仮に本当にアメリカが「普通であること」を大統領に求めていたのだとすると、実は期せずして民主党は最強の候補を選んでいたということになる。「普通」というのが、あまりにも曖昧であるならば、それを「decency(良識)」と言い換えてもいいだろう。

「普通であること」は定義上、熱狂的支持とは無縁だろう。であるがゆえに、選挙中はバイデンの「平板さ」が際立ち、どうもパッとしない候補という印象が定着してしまった。しかし、それこそが彼の強みだったという見方もありうる。

 後知恵にはなってしまうが、仮に民主党が大統領候補としてバーニー・サンダースを選んでいたら、トランプはサンダースを自分のリングに引き込み、我流の勝負を展開していただろう。しかし、トランプはバイデン相手には最後までそれができなかった。潰そうにも平板すぎてつぶしどころがない、それがバイデンだった。

「もう終わった男」が集める期待

 そんなバイデンが大統領に就任した。年齢のこともあり、とりあえず4年というタイムフレームで政権運営を考えているだろう。

 若干厳しい言い方をすれば、バイデンの歴史的役割はもう終わっている。