かつては犬猿の仲だった自民党と公明党が連立体制をとるようになってはや20年強。一時、旧民主党が政権をとった期間を除き、公明党は自民党と組んで政権運営に携わり続けている。もちろん公明党の支持母体は創価学会だ。こうした関係について「政教分離」の原理に反しているのでは? と疑念を抱いた経験がある方も少なくないだろう。果たして、創価学会はどのように政治に関わっているのだろうか。
ここでは、作家の佐藤優氏が創価学会に迫った著書『池田大作研究 世界宗教への道を追う』を引用。創価学会と政治の関係について紹介する。(全2回の2回目/前編 を読む)
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中間団体は民主主義を担保する力
創価学会の特徴の一つは、政治に強い影響力を持っていることだ。創価学会が支持母体となっている公明党は、自民党と連立を組んで与党の立場にある。宗教団体が政治に関与することを日本国憲法で定められた政教分離原則に違反するおそれがあるという批判もあるが、この批判は間違いだ。
政教分離に関係するのは、信教の自由を定めた第20条だ。
第二〇条【信教の自由】
1 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
2 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
3 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない
ここでいう政教分離とは、国家が特定の宗教を優遇したり忌避したりしてはいけないという意味だ。これに対して、宗教団体が自らの価値観に基づいて政治活動を行うことは認められている。創価学会や筆者が所属する日本基督教団(日本におけるプロテスタントの最大教派)は、国家機関でもなければ、私的利益を追求する企業でもない。人々が共通の価値観(宗教観)に基づいて結成し、自らの規律を制定した結社(アソシエーション)だ。国家にも私的利益追求集団にも属さない中間団体だ。このような中間団体が、国家権力の圧力、私的利益を追求する集団の暴走を防ぐ力になる。中間団体は、民主主義を担保する重要な力なのである。
政教分離についての国会答弁
現在、公明党は自民党と連立政権を組んでいるが、自公連立政権の中枢においても、憲法の政教分離を正確に理解していない人がいる。この点で、2014年6月24日に安倍晋三首相が伊吹文明衆議院議長に送付した、鈴木貴子衆議院議員の「我が国における政教分離の原則に係る内閣官房参与の発言に関する質問主意書」(同年6月16日提出)への答弁書が重要だ。質問主意書に対する答弁書は閣議決定が必要とされる。従って、日本政府の立場を拘束する。鈴木は、衆議院議員当選3回で、現在、自民党副幹事長をつとめるが、質問主意書を出した時点では新党大地に属していた。当時、鈴木は自公連立政権と対立する側にいたが、創価学会が政教分離原則に違反しているという誤解が社会に広まることが、日本の民主主義に悪影響を与えると考え、この質問主意書を提出したのだ。