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「進んでいく方向は決まっているので、自分では何もできない」 直木賞作家が語る“小説の終わり”

source : 本の話

genre : エンタメ, 読書

note

川越 自分でも小説がつたないという自覚もあって。文章って、どんどんいじれるじゃないですか。大島さん、完成ってあります?

大島 (きっぱりと)ある。

川越 ……すいませんでした。

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『熱源』(川越 宗一)

大島 私は書き終わったら、むしろ何にもできないの。後ろ半分を書き直すなんて、すごいと思った。終わったものは、変えられないもの。

川越 文庫にするときも手を入れない?

大島 語尾をちょっと直すこともあるけど、ほとんど何もしない。それはデビューしたときから変わりません。私、頭が悪いから、一カ所直すと他も直すことになって、ぐっちゃぐちゃになりそうで。

川越 あー……僕、頑張らなあかんな、と思いました。

大島 逆なんじゃない。私が頑張らないといけない(笑)。

川越 僕の場合は、たとえあまりよくなくても最後まで書いて、それでイメージを固めて書き直す。体当たりというか、書きながら考えているというか……僕、勘が悪いのかもしれません。

大島 頭が悪いのと、勘が悪いのと(笑)。川越さんの書き方は、イラストで例えれば、ラフを書く感じ?

川越 ええ、そうです。本当はプロットでするべきことを書きながらしていると思います。

大島 私は、プロットも書けない。

川越 いきなり本番ですか。

大島 だって、プロットって……書く前に何が書きたいかなんて、分からないよねぇ。

川越 はい、それがプロット書くときの悩みではあります。

大島 川越さんも、プロット書けないタイプ。だからラフを書いている。だから仲間だよ。書けない同士で(笑)。

後編を読む)

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