2021年1月20日、第164回芥川龍之介賞の選考会が開かれ、西條奈加さん(56)の『心淋し川』(集英社)が選ばれました。いずれも初の直木賞ノミネートとして話題となった今回の選考ですが、直木賞を受賞すると、受賞者の生活にはどのような変化があるのでしょうか。
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』で第161回直木賞を受賞した大島真寿美さんと、『熱源』で第162回直木賞を受賞した川越宗一さんが、日常の執筆スタイルや創作方法、直木賞決定後の悲喜こもごもなどを語り合いました。(全2回の2回目。前編を読む)
(初出:「本の話」2020.01.28)
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直木賞を取って変わったこと
大島 新聞のエッセイは終わった? いま大変でしょ。何作受賞記念エッセイを書くの?
川越 8か9本です。大島さんは何本書かれましたか?
大島 同じくらいかな。私も受賞が決まってから毎日書いていた。ネタをかぶらせないようにって言われるしね。受賞後の1週間は、本当に大変。いまがまさにそうじゃないの?
川越 はい、ちょうど1週間たちました。
大島 それと書店さんまわりもありますしね。私は一日に10軒伺った日もありました。半年前だからまだ暑くてね。
川越 インタビューもお陰様で沢山受けさせてもらってます。大島さん、取材で「この作品でいいたいことは」とか聞かれたと思いますが、どのようにお答えになってましたか?
大島 どうだったかなぁ、私のインタビューはぐにゃぐにゃだから(笑)。
川越 いろいろ取材の方が聞いてくださるんですが、「それって、読んでくれたら分かるのに」というのも中にあって、大島さんどうされていたんだろうと思いまして。
大島 わたし、受賞記者会見で「文楽の魅力を語ってください」と質問されて、「(その質問の答えは)本の中に書いてあります」って言っちゃったんだよね(笑)。
川越 次々にインタビューに答えていくと、「あれ、そうやったっけ?」と思うことがあるんです。なんか、うまいこと答えると、「そんなこと書いたっけ」ということが。自分の言葉が、だんだん自分から離れていくような感覚です。
大島 受賞記者会見はどうでした?
川越 心細くて、半分意識がなかったです。めちゃめちゃ緊張しました。