大島 受賞してから休めてないでしょ。
川越 そうですね。何もせず、「ただ、生きているだけでいい」という時間はないです。そういう小説を書いたのに(笑)。
大島 いまおいくつですか?
川越 41歳です。
大島 40歳になると体が変わるからね。若い頃と違うから。
川越 いまのところ、誰も休んでいいとは言ってくれないので……。
大島 休めばいいんだよ。とはいえ、私でさえ休めなかったからなぁ。川越さんにはずっと書いていって欲しいから、体を大事にしてください。次の作品は決まっているの?
川越 鄭成功を主人公にした連作短編小説を『オール讀物』に書いています(2月号掲載「波のみなもと」)。次も書かないといけないのですが、受賞後1行も進んでいません(笑)。
大島 活躍を楽しみにしてます。くれぐれも、体に気を付けてね。
(2020年1月23日、文藝春秋にて)
大島真寿美(おおしま・ますみ) 1962年愛知県生まれ。92年「春の手品師」で文學界新人賞を受賞。2011年刊行の『ピエタ』(ポプラ文庫)は第9回本屋大賞第3位。『あなたの本当の人生は』(文春文庫)は2014年第152回直木賞の候補作に。映画化された『チョコリエッタ』(角川文庫)、NHKでドラマ化された『虹色天気雨』『ビターシュガー』(ともに小学館文庫)、『戦友の恋』(角川文庫)、『ツタよ、ツタ』(小学館文庫)、『モモコとうさぎ』(KADOKAWA)など著書多数。『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』(文藝春秋)で第161回直木賞を受賞
川越宗一(かわごえ・そういち) 1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。京都市在住。龍谷大学文学部史学科中退。2018年『天地に燦たり』(文藝春秋)で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。短篇「海神の子」(「オール讀物」12月号掲載)が日本文藝家協会の選ぶ『時代小説 ザ・ベスト2019』(集英社文庫)に収録。19年8月刊行の『熱源』(文藝春秋)で第10回山田風太郎賞候補、第9回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞、第162回直木賞受賞。