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「とても優秀でした」Aさんの希望に満ちた日々

 研修中のAさんを知るDHC現役社員が語る。

「Aくんはとても優秀でした。リーダーシップもあり、研修中に出される課題にも一生懸命取り組んでいました。人当たりもよくてコミュニケーションスキルが高い印象で、『新入社員のAくんと飲みに行ってきたよ』と話す社員もいました。物怖じせず人の懐に入っていくので、ある意味、新入社員らしいフレッシュさはなかったかもしれませんね(笑)」

 Aさんにとって例年より遅れてスタートした社会人生活は、思いのほか楽しいものだった。研修が始まって2カ月が経つ頃には、DHCで長く働きたいと思うようになったという。

「マーケティングの視点から商品と消費者の関わり方を学んだり、工場から商品が出荷されるまでを目の当たりにしたり、DHCという巨大な組織がさまざまな仕事で成り立っていることを実感しました。自分もこの会社で居場所を見つけて、大きな仕事をできるようになりたい、そう思いました。先輩社員もとても良い人たちばっかりで、毎日とても楽しかったです」(Aさん)

証言するAさん。話しぶりは明るいが、リュックの中には労働基準監督署に提出する多数の書類が入っていた ©文藝春秋

 しかしAさんの希望に満ちた日々は長くは続かなかった。2020年8月、「文春オンライン」でも報じた“サクラ投稿”についての社内通達が掲示されたのだ。

社内に通達された“サクラ投稿”指示

 この“サクラ投稿”とは、「らくがき板」というハガキに書かれた消費者の感想コメントを、SNSや口コミサイトに消費者に“成り代わって”大量投稿せよと吉田氏がDHCの社員に対して指示したものだ。引き受けた社員には月10万円の報酬が提示されていたが、その作業を無償で引き受けた社員は“ゴールド社員”、“DHC特別社員”といった称号が与えられ、ゴールドバッヂの授与や賞与・人事評価での優遇が約束された。

《落書き版(原文ママ)に書かれた内容をデジタル化して、それをファンの人に成り代わってあらゆるメディアに次から次へと投稿していく。これを副業でやってくれる人を募集する。固定給制度でスタートは月給10万円。毎月一度報告をしてもらい、貢献度によって11万円、12万円、・・・、20万円と上がっていく。DHCに愛社精神があり、是非やってみたいと思う人は応募せよ》(2020年8月20日「通達」より)

“サクラ投稿”を推奨する会長からの「通達」(2020年8月20日)

《報酬を辞退したいと申し出てくれた奇特な人たちには、家で仕事をしてもらうわけにはいかないので、当然就業中の手がすいた時にやってもらうことになる。この人たちには「ゴールド社員」という称号を与え、その愛社精神を将来にわたって尊崇の対象としたい》(2020年8月25日「通達」より)

“サクラ投稿”に大量の応募があったと伝える会長からの「社内通達」(2020年8月25日)
報酬辞退者には「ゴールド社員」の称号を与えると伝えた「社内通達」(2020年8月25日)

《無償ゴールド会員はいま専用のゴールドバッヂを作っているので、これも今しばらく待っていただきたい。無償ゴールド会員は賞与支給の際にその貢献度に応じて厚く報いるつもりである》(サクラ投稿を引き受けた社員に宛てたメール2020年10月12日)

 吉田氏は社内向けの文書で、この施策に200名を超える従業員が応募したとも明かしている。