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消費税不要? お釣りはすべてピン札? ありえない“おもてなし”で県民に愛される「秋田の三越」に行ってみた

2021/01/29

genre : エンタメ, 社会,

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華やかさ満点だった「秋田の三越」

 かつては屋上の覆われた部分が展望台になっており、その上には巨大な紡錘形の看板が立っていたという。

屋上の覆われた部分にはかつて展望台があったという ©あさみん

 屋上にはお子様遊戯場という観覧車もある遊園地があったというから、今では想像もできないほどの夢の国が広がっていたのだろう。

3階はかつての食堂。大きなカーテンから豪奢さがうかがえる ©あさみん

 3階には木内直営の広い大食堂があったようで、外からは今でも大きなカーテンが窓越しに見え、豪華な印象を与えている。

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 現在の木内は1階のみの営業になっており、定休日も増え縮小の傾向にあるようだが、せっかく昔の木内がそのまま残っているのだから、2階3階を復活させてほしいところ。必ず再び秋田の星になると思うのだけれど。

多くの人に愛されている木内百貨店

 最後に、前回の沢田マンションの記事で今回の木内のことをほんのわずか触れただけにもかかわらず、非常にたくさんの反響をいただいた。木内のことを語り伝えたいと多くの人々に思われていることこそが、木内を伝説と呼びたい理由だ。

 木内をまだ知らない方からは「気になる」「行ってみたい」と声があがり、知っている方からは、1階にあった噴水ジュースと呼ばれる生フルーツジュースが格別においしかったこと、1階には食料品やおみやげ売り場が、3階には玩具売り場や大催事場があったこと。直営の大食堂は入り口にあるサンプルで注文を選び、窓口で食券を買うスタイルで、各席には番茶が入った木内のロゴ入り茶瓶が置かれていたこと。

夜の街に浮かぶ看板も美しい ©あさみん

 大食堂ではホットケーキや台付きのソフトクリームを食べたことや、絶品だったお子様ランチには木内の旗が立っていたこと。もちろん屋上遊園地で遊んだ話や、広すぎる館内でよく迷子になったこと。家では大切なものを包むのに木内の包装紙が使われ、紙袋がたくさん保管してあったことなど、鮮明に記憶された貴重なお話をたくさん伺うことができたのが大変嬉しい。

 これほどまでに多くの方の心に刻まれ、まだ知らない方の心を動かす百貨店がほかにあるだろうか。

 木内での思い出が羨ましく、どれだけお話を聞いても、共有できない自分が悔しい。

 それでも、少しだけでも当時の華やかな時代を味わうために、また秋田に行ったら、包装紙に包まれた石鹸を紙袋に入れて持ち歩きたい。

※記事公開(2021年1月29日)現在、木内百貨店は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、臨時休業中です。

消費税不要? お釣りはすべてピン札? ありえない“おもてなし”で県民に愛される「秋田の三越」に行ってみた

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