「チェーンストア理論」は時代遅れか?
1960年代に生まれたチェーンストア理論は日本の小売業を大きく発展させたが、いまや「チェーンストア限界論」もささやかれるようになった。
チェーンストア理論の基本は、本部主導の徹底管理だ。各店舗に仕入れ権限などをもたせる個店経営は否定している。
しかし一方で、ドン・キホーテは店舗に自由裁量を与えて個店経営を突き進み、成長を続けている。2019年には業績が低迷していた総合スーパー・ユニーに出資し、ユニー店舗を「ドンキ化」して、チェーンストア経営から個店経営に大きく切り換えた。売る気持ちが弱かった現場社員に仕入れ権限を与えて自ら売るように変えて、業績は一気に改善した。
ユニクロでは、都市部の大型店舗には本部から現場へ大幅に権限を委譲した。
小売業各社も脱チェーンストアという言葉を使うようになった。
では、チェーンストア理論は限界なのか?
ニトリはチェーンストア理論の優等生だ。似鳥会長は「人生の師匠」と呼ぶ渥美氏からチェーンストア理論を忠実に学んで実践してきた。コロナ禍にあっても34期連続増収増益と業績は絶好調を継続している。似鳥会長は先のインタビューでこう語っている。
「チェーンストア限界論が言われるのは、それができていないからだ。チェーンストア理論は正しい」
また法政大学の矢作敏行名誉教授は「店舗が地域や立地に合った品揃えや店舗運営をするのは当たり前。商品別・店舗別・地域別に売れているものがわかるのは、チェーンストアの強み。個店で最適な品揃えができるのもこの情報のおかげだ。個店経営はチェーンストア理論の否定ではなく、進化形だ」と述べている(『販売革新』2015年11月号)。
いまの客は店のフロアで何を買うかを決める。店舗に権限委譲して判断できれば、ドンキのように売り上げは大きく上がる。チェーンストア理論が個店経営に進化するのは、歴史の必然なのだろう。
米国小売業から貪欲に学び続けた結果、日本で独自に進化し、日本の小売業発展に貢献をしたチェーンストア理論は、いまだに有効だ。しかし理論が提唱された1960年代当時から社会は変わった。チェーンストア理論を改めて学び、さらに進化させることで、日本の小売ビジネスは拡大できるはずだ。