各紙の報道に反応する河野大臣
何か匂うなら取材するのが記者である。少しでも異変を感じたなら「その時点での内部の声や空気」を報じることだって重要だ。
読売は《複数の政府関係者が明らかにした》と書いていた。5月7日夕刊では朝日も同様に「複数の政府関係者が明らかにした」と書き、毎日も産経も後追いした。つまり各紙が取材した結果だった。
この「政府関係者」というキーワード。実は河野氏は今回も反応している。
1月20日に、
「新聞各紙が『政府関係者』なる者を引用しているけれど、全く根拠のないあてずっぽうになっている。信用しない方がいいよ」と投稿した(時事通信)。
調べてみると当日の読売朝刊に「一般向け接種5月にも」「7月頃までには大半の国民で接種を終えたい考えだ」とあり、
「複数の政府関係者が19日、明らかにした」
と書いてある。河野氏はおそらくこれを読んだのだろう。
ワクチン接種の時期を取材するのは必然なのに…
ワクチン、ワクチンと言われたら多くの人は「ではいつ頃に接種できるのだろう?」と普通に思うはずだ。私もそう。それに対し記者は取材をする。その時点での見通しだとしても、内部の声や空気を知れるのは重要だ。
もちろん「政府関係者」とか「政府高官」とか「首相周辺」とか匿名のコメントではなく、誰が言っているのか名前が明らかにされたらさらに理想的だ。しかしそれなら喋らないという人もいるはず。ではその結果どうなるか。担当大臣などトップの「自分が流したい話」しか報じられなくなってしまう。俺(大臣)が言っていることだけが正解というような世界になる。
それだけではない。河野氏の「信用しない方がいいよ」は批判者をブロックしているツイッターでの発言である。批判が発生しづらい空間で強い言葉が発せられることで、それを見た人々が「そうだ、そうだ」となれば権力者にとってはそれだけで好都合だ。
以前にはこんなことがあった。
『河野氏「真摯に反省」 北方領土返還めぐる発言 本紙が抗議』(産経ニュース2019年7月9日)
河野氏の外相時代の話である。
講演で北方領土問題をめぐりロシア側に四島返還を求めるつもりはないとの考えを示したと「産経ニュース」が報じたら河野氏はツイッターで「ひどい捏造」と批判したのだ。
産経新聞社は《報道内容は「(講演会の)質疑に基づく公然の事実で、『捏造』や『誤報』ではない」と厳重に抗議》した。
すると河野氏は記者会見で「言葉足らずのところがあれば、そこは真摯に反省し、おわびする」と述べ、
《このツイートは同日、削除された。》(産経ニュース同前)