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遺族を苦しめる極刑
A(元少年)君。私は君に問いたい。
君がこれまで、検察側の起訴事実を大筋で認め、反省しているとして情状酌量を求めていたが、それはすべて嘘だったと思っていいのですか。
私は君が法廷で真実を語っているとは到底思えない。もしここでの発言が真実だとすれば、私は絶望する。君はこの罪に生涯反省できないと思うからだ。
君は殺意もなく偶発的に人の家に上がり込み、二人の人間を殺したことになる。
こんな恐ろしい人間がいるだろうか。
君は殺意もなく、生きたいと思い最後の力を振り絞って抵抗したであろう妻と娘の最期の姿が記憶にないのだから、反省のしようがないと思っている」
そして、遺族は裁判官に訴える。
「私たち家族の未来を奪った被告人の行為に対し、私は怒りを禁じ得ません。人の命を身勝手にも奪った者は、その命をもって償うしかないと思っています。それが、私の正義感であり、私の思う社会正義です。そして、司法は社会正義を実現し、社会の健全化に寄与しなければ存在意義はないと思っています」
そして、あらためて言うのだった。
「裁判官のみなさま。私は妻と娘の命を奪った被告に対し、死刑を望みます。正義を実現するために司法には死刑を科していただきたくお願い申し上げます」
極刑とは遺族をまた苦しめるものであることは、いうまでもあるまい。