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「私は事件直後、事件を社会の目にさらし、司法制度や被害者の置かれる状況の問題点を見いだしてもらうことを選択しました。家族の命を無駄にしないことにつながると思ったからです」
「悔悟の気持ち」を抱く理由
その上で、いまはその判断が間違いだったのではないかと悔悟の気持ちに襲われるとも言った。理由は、差し戻し審中に弁護団が自らの主張を世間に知らしめるために、インターネット上に裁判の資料を公開していたことだった。
「妻の絞殺された状況を図解した画像が流布され、議論されている状況を快く思っていません。妻の悔しさを思うと涙があふれてきます。家族の命をもてあそばれている気持ちになるのは確かです」
声を大きくすることも、また苦痛を伴う。
そしてまた彼は、ずっと死刑の適用を求めると主張しながら、実は被告人は死刑にならないのではないかと思っていたことも、法廷の被告人に向かって吐露している。
「私は、前回の控訴審ではじめての意見陳述の時、こう述べました。
『妻と娘の最期の姿を君は忘れてはならない。君が犯した罪は万死に値します』
その時には、死刑判決が下されない可能性が高いと思っていました。君が社会復帰した時に二度と同じ過ちを犯してほしくないと思い、人間としての心を取り戻せるようにと一生懸命に話しました。
それから5年以上の歳月が流れ、死刑判決の可能性が高まり、弁護人が代わり、君は主張を一変させた。それが私をいま最も苦しめています。