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車両特攻、銃殺、放火…現在も収まらない“山口組”同士の「抗争」はなぜ起きてしまったのか

『日本のヤクザ 100の喧嘩』より #2

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頻発するようになった山口組間の衝突

 その後も、六代目側の直系組織本部などで、幹部や組員らが集まる会合が開かれたりすると、近くの山健組系組織から組員らが車両で駆けつけ、本部の周りを数珠つなぎになって走ったり、事務所近くでたむろする光景が繰り返されたのである。

 そして、長野での銃撃事件で、事件を起こすことへのハードルが下ったのか、両山口組の間で衝突が頻発するようになった。

 同月17日から翌18日未明にかけて、愛知県名古屋市内にある神戸側直系の山健組傘下の健仁会本部で、酒に酔った六代目側直系の三代目弘道会(竹内照明会長)の幹部らが、事務所のインターホンを破壊する事件が起きた。そして、事務所の外へ出てきた山健組系組員らと乱闘になり、最終的に双方で24人が逮捕されている。また、関係先として愛知県警は弘道会本部や山健組本部などを家宅捜索した。

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 分裂後、初めて弘道会と山健組が直接に戦ったことから、大抗争へのカウントダウンが始まったと覚悟した業界関係者も少なくなかったようだ。

山口組の「お家芸」車両特攻

 12月18日には、大阪市内にある六代目側直系の秋良連合会(秋良東力会長)の元傘下組織事務所の建物に、車両が突入して分厚い金属製の玄関や壁を破壊する事件が起きた。過去、山口組が関わった抗争で、何度も行われた「お家芸」ともいえる車両特攻が、六神抗争でも実行されたのである。

 年が明けても勢いは止まらず、16年1月9日の早朝に、福岡県内にある六代目側直系の一道会(一ノ宮敏彰会長)本部事務所の敷地内に火炎瓶が投げ込まれた。幸い、火は燃え広がらずに壁の一部などを焦がしただけで済みケガ人もなかった。原因としては、福岡市内にある両山口組の傘下組織間での組員の引き抜きが考えられた。

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 組員の引き抜きをめぐる攻防についても、六神抗争は山一抗争時のときとは様相が異なっている。

 山一の分裂時には、当初は一和会の勢力が四代目山口組を上回っていたが、時間が経つにつれて四代目側に戻る組員は増えていった。