絵里子さんが松永と連絡を取るため、ワールドに電話を入れたときも、緒方が対応していたという。
「事務所に電話をかけると、緒方が出るのが一番多かったですね。そうすると、いま(松永は)出張中でどこどこに行ってますとか、そんな対応でした。行き先についてはロシアだとか、海外の都市の名前も出ていました」
愛人としてちやほやされて
当時、松永に妻子がいることは、絵里子さんも承知していた。
「向こうは結婚しているし、結局不倫ですよね。私から『別れて』と言ったりとかはないです。なんかその宙ぶらりんなところが、自分的にも都合がよかったのかもしれません」
詳細については改めて記すが、松永と妻は1992年3月に離婚している。その妻が出ていった後に、絵里子さんは松永夫婦が住んでいた、本社ビルの1階に行ったことがあると語る。
「従業員の人とか銀行の人とか、みんなで飲んでいて、松永が『いまからうちに行こう』ってなって、朝5時くらいまでいました。部屋はきれいに片付いていた印象があります」
松永は愛人として、絵里子さんを常に持ち上げ、大事に扱っていたようだ。「一度も暴力的なことは受けてないですし、いつもちやほやされていました」と話す彼女は、当時の自分について、「なんかそういうふうにされているのが、気分良かったんやないですか」と振り返る。松永は絵里子さんとエレベーターでふたりきりのときや、はしご酒での移動中に部下と接待相手を先に歩かせては、彼女を抱き寄せてキスをするなど、その気にさせる態度を崩さなかった。
1992年春「示談金がいるから」と100万円
それまで絵里子さんに対して、カネの話をすることのなかった松永が、彼女にみずからの“窮状”を訴えたのは、彼の離婚成立の前後にあたる1992年春のことだ。
「『緒方が事故に遭った』という話をしてきて、『示談金がいるから』と……。たしかそのときは、200万円くらい必要だと言われて、私が消費者金融を回って、100万から120万円くらい用立てたんです」
その際に松永は絵里子さんに対し、複数の消費者金融でカネを借りてもらえれば、毎月の返済はワールドがするという話をしていた。絵里子さんが名義だけを貸してくれれば、迷惑はかけないと誓ったのである。これは、松永がその他の愛人たちにも持ちかけていた、金策の常套手段だった。
恋人の窮地を救うために、絵里子さんは松永の願いを受け入れ、ワールドの従業員だった女性とともに消費者金融を回ったという。彼女こそは、本連載第40回で元従業員の山形さんの話に出てきた、高校を卒業して新卒でワールドに入社し、松永が「モノにした」と嘯いていた女性社員・Qさんである。
「Qさんがついて来たんですよ。ここ行って、ここ行って、ここ行ってという具合に。それで5社をまわり、カードを作りました。一番貸してくれるところが50万円で、あとは5万円とか10万円とかでした」