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(3)全棋士参加棋戦優勝

連勝記録にストップをかけられた竜王戦トーナメント2回戦。対佐々木勇気五段(当時)。©白澤正/文藝春秋

 将棋界では八大タイトル戦とは別に、トーナメント方式で優勝を争う棋戦も多い。

 低段位の若手棋士には、新人王戦、加古川青流戦、上州YAMADAチャレンジ杯という舞台が用意されている。今年度、残念ながら藤井は、これらの棋戦では敗退した。

 一方で、朝日杯将棋オープン戦、NHK杯将棋トーナメント、銀河戦と、予選段階から全棋士が参加する棋戦で、藤井がどこまで勝ち進み、いつ優勝をするのかもまた、注目したいところだ。

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 藤井は10月6日、朝日杯一次予選決勝で、宮本広志五段と対戦することが決まっている。そこで勝ち、さらには二次予選、本戦トーナメントで勝ち進めば、全棋士参加棋戦での優勝達成となる。ちなみに朝日杯の優勝賞金は公表されていて、750万円と高額である。

 また藤井は、NHK杯でも勝ち進んでいる。予選は3連勝で抜け、本戦1回戦では千田翔太六段(2017年の棋王戦挑戦者)、2回戦では森内俊之九段(18世名人資格保持者)と、いずれも強敵を破って、現在は3回戦に進出している。

 特に森内戦は、Eテレで異例の生放送が行われ、大きな注目を集めた。藤井は愛知県瀬戸市の出身。地元の東海地区では、特に異例の視聴率(3.2% ※通常は1%前後)となった。3回戦では、既に稲葉陽八段との対戦が決まっている(正式な日程はまだ発表されていない)。稲葉八段は順位戦ではA級に所属し、名人戦七番勝負にも登場したことがある、現在のトップクラスの1人である。

 

 NHK杯における若手棋士の活躍といえば、1988年度、羽生善治五段(当時)が18歳の時に達成した優勝のインパクトが大きかった。大山康晴(3回戦)、加藤一二三(準々決勝)、谷川浩司(準決勝)、中原誠(決勝)と、4人の名人経験者を次々と連破しての快挙だった。

 藤井がこのままNHK杯を勝ち進んで15歳で優勝を達成すれば、羽生の18歳をやはり大幅に更新して、最年少記録となる。今後勝ち上がるごとに東海地区のEテレの視聴率はどこまで伸びるだろうか。そんなところにも関心を寄せたい。

(4)順位戦昇級記録

『天才 藤井聡太』 (中村徹 松本博文 著)

 将棋界には、名人を頂点とする、順位戦という制度が存在する。1人の名人の下に、トップ棋士のわずか10名(今期は11名=編集部注)で構成されるA級があり、以下はB級1組、B級2組、C級1組、C級2組と続く、ピラミッド的な構造となっている。

 現在は2016年に羽生善治現二冠を破った29歳の佐藤天彦が名人位に君臨している。

 新人の藤井は現在、順位戦では一番下のC級2組に所属。この順位戦を、どれだけのスピードで藤井は勝ち上がっていくことができるのか。もしノンストップで昇級を重ねていけば、18歳8か月で、A級に所属することができる。加藤一二三九段が達成したA級在籍最年少記録の18歳3か月を抜くことは、現在の制度上では不可能であるが、それに次ぐ大記録となるだろう。

 2017年度、C級2組には50人が所属していて、それぞれの棋士が全10回戦をたたかう。昇級することができるのは、上位わずかに3人だけである。藤井はここまで、瀬川晶司五段、中田功七段、高見泰地五段、佐藤慎一五段と連破して、4戦全勝。このまま突き進むことができれば、昇級の可能性も高いだろう。しかし、いつの時代にあっても、どれほど実力を持つ若手であっても、C級2組をデビュー初年度の1期目で抜けるのは、容易ではない。1期抜けは過去10年では4名のみ。さらにそれ以前となれば、89年度の屋敷現九段まで遡る。

 藤井もこの先、一筋縄ではいかない対戦相手が控えている。特に最終の10回戦(年度末の18年3月)には、上州YAMADAチャレンジ杯で苦杯を喫した、24歳の三枚堂達也五段が待ち構える。

 実は、藤井のこれまでの6敗は、三枚堂を含め、すべて20代の若手棋士に敗れている。藤井が勝ち進めば、この対戦が大きな関門となる可能性は高い。