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それがわかれば、もうちょっと勝てる気がします(笑)

――2012年にプロ入りされてからの斎藤八段の棋歴を挙げるならば、電王戦への出場(15年)、タイトル挑戦(17年)、タイトル奪取(18年)、A級昇級(20年)などが思い浮かびます。

斎藤 まず、電王戦は大きかったと思いますね。当時はその2年前にC級1組へ昇級したものの、そこから伸び悩みを感じる時期でした。何かを変えたいと思ったのが出場を決めた一つの理由です。大舞台を経験できて、精神的に落ち着きました。それ以降はその経験を活かせていると思います。電王戦がタイトル挑戦に、タイトル獲得は前年の挑戦失敗が、それぞれつながっているのではないでしょうか。

――電王戦では将棋ソフト「Apery」と対戦されましたが、当時と比較して、今の将棋ソフトについてはどのようにお考えですか。

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斎藤 強さも含めて、全然違いますよね。電王戦では将棋ソフト対策の研究をしていたわけですが、今は対人の研究にソフトを用いているわけです。私はソフトのいいところと、自分の持ち味がかみ合う部分を探しているという感じですね。

 将棋ソフトが指し示す最善と、私の考える最善がまったく逆な個所は、そこをソフトで研究しても生かしきれないと思います。具体的に言いますと、序盤で思いついた手をソフトがどう判断するかを見ています。自分の対局の振り返りに活用していますね。ソフトが新たな可能性を多く示すので、棋界全体に序盤のレパートリーが増えていると思います。広がり過ぎて、研究しても予定通りに進まないということの方が多いですね。

 

――ソフトを使いこなせる棋士とそうでない棋士の違いはどのようなところにあるのでしょうか?

斎藤 それがわかれば、もうちょっと勝てる気がします(笑)。勝っている棋士はうまく使えているんだろうなと思いますね。私も自分なりに模索していて、最近はそれも研究の一つになっています。

タイトル初挑戦の棋聖戦、そんな余裕はありませんでした

――続きまして、タイトル戦登場と奪取についてうかがいます。

斎藤 初挑戦の棋聖戦では、今にして思えば大舞台を楽しもう、好きな将棋を指そうとしながらも、実際にはそんな余裕はありませんでした。

――その時は羽生善治棋聖への挑戦でした。第一人者と大舞台でぶつかっての印象はいかがでしたか。

斎藤 入門書を読んだ棋士との対戦なので、感慨深かったのは確かです。緊迫感のある大舞台でも常日頃と変わらない羽生さんの様子を見て、その落ち着きぶりに「自分も今後はこうでなければいけない」と感じました。