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大事なのは「視力ではなく距離」 メガネを作るときに勘違いしがちなこと

メガネにまつわる“素朴な疑問” #3

2021/02/08
note

——そうした場合は、遠近両用レンズを使うわけですね。

加藤 はい。でも遠近両用を使えば見えるようになる、という単純な話ではないんです。たしかに遠近両用レンズは、レンズの上部に遠くを見る度数があり、下に向かうほど近くを見る度数へとなだらかに変化しているので、遠くから近くまで見ることができます。

 ですが、見たい距離を伝えないと、一番見たいパソコンの距離の度数がレンズの下側に少ししか入っていないというメガネができ上がってしまうこともあるわけです。つねにアゴを上げるような姿勢でないと見ることができず、それで「私には遠近両用は合わない」と諦めてしまう。これは私たちとしても残念ですね。

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お店にいる間が勝負!

——「とりあえず、遠くも近くも見たい」といったあいまいなオーダーだと、そうしたことが起きてしまうわけですね。

加藤 そうなんです。ですから、距離が大切なんです。きちんとした知識のある眼鏡店なら、その距離に合わせたメガネを作ってくれます。遠近両用や中近両用といった累進レンズ、もしくは運転用と日常生活用は使い分けたほうが良いのかなど、距離に応じて必要な度数とライフスタイルに合わせてレンズを提案してもらえるはずです。

——では、見たい距離に加えて「趣味で手芸をしている」、「車は運転しない」、「職場で使うパソコンはデスクトップ」など、自分の情報をできるだけ伝えたほうがいいですね。

加藤 お店で測定が終わったあと、仮枠をつけてテストレンズを試しますよね。それを掛けたときに、ラクな姿勢でパソコンなどご自身のやりたい作業ができるかを確認することも大切です。

——いつも通りの姿勢や距離でスマホを見てみたり、ノートパソコンを持ち歩いている人は、実際に出して作業をしてみるのもいいですね。

 加藤 はい。自分の普段の生活をできる限り再現して、その見え方で大丈夫なのかを確認してください。お店だと普段より妙に良い姿勢でスマホやパソコンを見たりしてしまうんですけど、あくまでいつもの姿勢で。お店にいる間なら、度数も変更できますから。お店にいる間が勝負ですよ!

「ニコンメガネ」の店舗には、生活環境を再現したブースがあり、さまざまなシーンでの「距離」を図ることができる

最初に予算を伝えてみる

——遠近両用レンズや中近両用レンズになると、設計によっては価格も上がってきますよね。メガネを買う際、レンズの価格が最後までわからないのが不安という人も少なくありません。

加藤 そうした場合、最初に予算を伝えるとよいと思います。レンズにはたくさんの種類があり、価格にも幅があります。良心的な眼鏡店なら、予算の範囲内でできるだけ適切なものを提案するでしょう。当店では測定の結果グレードの高いレンズが必要だと判断すれば、事情を説明したうえで予算内のものと比較していただくこともあります。そのうえで「数年間毎日使うことを考えれば快適な見え方のほうが良い」と、予算を超えても納得いただけることも少なくありません。