永田町の格言は「決戦は金曜日」だったが……
GoToについては、決断した「曜日」もよくありませんでした。政府が「Go Toトラベル」の全国一斉停止を発表した12月14日は月曜日です。これは永田町の常識からすると、かなり異例のことです。古い政治記者ならよく知っていることですが、永田町の経験則は「決戦は金曜日」だからです。
つまり、週の終わりに重大な決定をくだしておけば、土日の間にいろんな問題が生じたとしてもリセットする時間があり、次の月曜日からは新しい展開を始めることができる。決定が月曜日だと、下手をすると1週間の間ずっと批判が燃え上がり、その収拾に追われることになります。現に12月14日の時は、その日の夜に、首相が銀座の有名ステーキ店「ひらやま」で5人以上の会食をしたことが大きな批判の的となり、その火が消えるまでかなりの日数がかかってしまいました。
親分が関わってきた仕事を「ちゃぶ台返し」することはできない
菅首相の政治スタイルとしては、最初にかなり断定的なことを言ってしまい、あとでにっちもさっちもいかなくなるというパターンが多いのも気になります。1月7日、首都圏の1都3県に緊急事態宣言を発出したことを報告した記者会見では、「1カ月後には必ず改善させる」と言い切りましたが、今のところ医療のひっ迫を止めることはできていません。また、昨年10月の臨時国会の所信表明演説で菅総理は、「絶対に感染爆発を防ぐ」と“絶対”という言葉に力を込めて断定的に語りました。しかし、結果的に、感染拡大は止まらず、どんどん広がってしまった。これで国民の「期待感」は「不信感」へと変わってしまったのではないでしょうか。
なぜ、コロナ対応をめぐって、これほどまで国民との感情的な“ズレ”が広がってしまったのか。その原因は菅首相の「なんでも一人でやってしまう」政治スタイルにあると私は考えています。菅首相は厚労省の幹部と日常的にやり取りしたり、週末に首相公邸に呼んだりして、政府の「大方針」の決定にスタートから関わっています。一見すると、良いことに思えるかもしれませんが、これが「政策の柔軟性」を失わせています。一般的に、親分が一から関わってきた仕事については、途中で下のものが「それはちょっとまずい」と思ったとしても“ちゃぶ台返し”はなかなかできません。これは、お役所のような上下関係が明確な縦型組織なら、なおさらです。担当大臣も官僚も首相が最初に決めた大方針に逆らってまで「NO」と言える人がいないのです。