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「菅さんは一人船頭だ。渡し船を棹一本で渡ろうとしている」

 菅政権の前の安倍晋三政権は、よくも悪くも官邸官僚が幅を利かせ、「チーム安倍」が機能していました。しかし、菅政権にはチームによる一体感がない。ある側近は、私に「菅さんは一人船頭だ。渡し船を棹一本で、一人で渡ろうとしている」と漏らしたほどです。

「首相は一人船頭である」。そのことをよく表しているのが、河野太郎行政改革担当相を新型コロナウイルスワクチン接種担当大臣に任命した人事です。菅首相はこの人事について、自民党の二階俊博幹事長ら党執行部に一切相談していません。

二階幹事長 ©️文藝春秋

 寝耳に水の人事を突き付けられた二階幹事長が、相当不快な念を持ったのは間違いありません。

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 恐らく菅首相は、「河野氏の起用を二階幹事長ら党執行部が本当に了解してくれるだろうか」と思ったのではないでしょうか。だから、反発は覚悟のうえで、決定事項を通告するしかないと思った可能性があります。

いきなり坂井官房副長官と揉めた河野氏は「危険なカード」

 その河野太郎氏の起用については、私はある種「危険なカード」を切ったと思っています。河野太郎という政治家は、突破力は抜群にあるけど、その分調整力に劣るところがあるからです。たとえば河野氏が防衛大臣だった2020年6月に「イージス・アショア」の配備計画を停止すると発表したことで、自民党内に大きな反発が生まれました。中止だと大々的に発表したのはいいが、その後のカバーを一切怠ったために、結局イージス・アショアを配備することを軸に据えていた日本の「対北朝鮮ミサイル防衛政策」は、再び迷走が始まっています。

河野太郎氏 ©️文藝春秋

 河野氏は今回ワクチン担当相になった際も、いきなり坂井学官房副長官と揉めました。1月22日の記者会見で、坂井官房副長官が「6月までに接種対象となる全ての国民に必要な数量の確保は見込んでいる」と説明したことについて、「修正させて頂く」と河野氏は述べた。ところが、坂井氏は同日の会見で「修正しません」と反発しました。それから、河野氏はワクチンの流通管理システムの構築に当たってきた厚労省への根回しもないまま、「マイナンバーでワクチン管理をする」といきなりぶち上げて、大きな反発を引き起こしてしまいました。