WBC歴代屈指と語り継がれるに違いない好ゲームだった。

 8日の韓国-台湾戦。シーソーゲームを延長10回タイブレークの末、台湾が執念で勝ち取った。

 2024年の野球国際大会「プレミア12」で日本を破り優勝、世界ランク2位という立場で挑んだ今大会、ファンの大熱狂とは裏腹に、台湾代表は初戦から苦しいスタートを強いられた。

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「100年分の戦力差」「WBC史上最悪の試合」

 日本に0‐13で大敗した後、台湾の野球ファンやメディアからは遠慮のない厳しい声が上がった。1次ラウンドで敗退となったものの、チェコ戦での快勝、続く韓国戦の勝利で、風向きは大きく変わっているようだ。

 連敗後からの連勝。この間、台湾代表にはどんな心境の変化があったのか。20年以上にわたり、現地で台湾プロ野球を見つめてきた駒田英さんに話を聞いた。

2024年の「プレミア12」では、侍ジャパンを破り優勝した台湾だったが…… ©鈴木七絵/文藝春秋

チームを変えた「監督の涙」

「大谷翔平選手は誰もが知る素晴らしい選手。それでも臆することなく、選手たちは正面から立ち向かっていたと思います」

 台湾代表の曾豪駒(ツェン・ハオジュ)監督は、日本戦後の記者会見で涙ながらに語り、敗戦の責任は全て自身にあると選手たちをかばった。

大谷翔平の満塁弾を含む侍ジャパンの猛攻を前に、台湾はコールド負けを喫した ©文藝春秋

 初戦のオーストラリア戦から、7回コールドで敗れた日本戦までは計16イニングにわたり無得点、4安打に抑え込まれた台湾打線。大会前の強化試合からチームの取材を続けてきた駒田さんは、当初の不振の要因をこう分析する。

「一つは、プレミア12王者というプレッシャー。もう一つは、主力打者の相次ぐ負傷離脱です」

 カブス傘下のジョナサン・ロング選手とタイガース傘下の李灝宇(リ・ハオユー)選手が立て続けに負傷。長打力を期待された2人の主軸を欠いたダメージは大きかった。

 初戦のオーストラリア戦では、徹底的に研究された末に左腕3人を並べられ、わずか3安打に封じ込まれた。さらに主将の陳傑憲(チェン・ジェシェン)選手が死球で負傷。不運が重なり、日本戦の屈辱的な大敗に至った。

「今のツェン監督は非常にコミュニケーションを重視しています。『責任は僕が取る、選手は頑張っている』と常に選手をかばい続けてきました。あの大敗で、不甲斐ない試合をしてしまった自責の念、悔しさが溢れ出したのでしょう。その監督の涙が、選手たちの目を覚まさせたというか、ここからチームが奮起しました」(駒田さん、以下同)