「野球のタブー」を破ってまで、格下相手に立ち向かった
転機となったのは第3戦のチェコ戦。格下相手とはいえ、負ければ予選敗退が決まる背水の陣。台湾代表が見せたのは、プライドを捨てた「勝利への執念」だった。
駒田さんは次のように話す。
「初回、1番打者の鄭宗哲(チェン・ゾンジェ)選手がセーフティバントで出塁。あれでムードが一気に『行けるぞ』と変わりました。さらに3番のS.フェアチャイルド選手の送りバントがチェコ側のミスも誘い、1点をもぎ取った。メジャー経験者が、どんな手を使ってでも勝とうとする姿勢を1回から見せたことで、完全にチームに火がつきました」
チェコのハジム監督が試合後、「元メジャーリーガーにまでバントをさせて、台湾がここまで自分たちを恐れ、本気でぶつかってきてくれたことが嬉しい」と語ったほど、台湾の気迫は凄まじかった。
14-0で快勝したこの試合、台湾はWBC大会最多となる1試合8盗塁も記録した。
大量リードするチームは盗塁してはいけないという「暗黙のルール」に触れる行為ではあったが、「それだけ勝ちに徹したということでしょう。ツェン監督は試合後、チェコのハジム監督に謝罪したそうです」。
プレミア12王者がプライドをかなぐり捨てて見せた勝利への渇望が、翌日の韓国戦への伏線となった。
「いつも苦しめられてきた」因縁の相手・韓国とは激戦に
8日の韓国戦、台湾は昨季から北海道日本ハムファイターズに所属する先発の古林睿煬(グーリン・ルェヤン)選手を始め、エース級のリレーで挑んだ。
台湾の野球ファンにとって、韓国戦は特別な意味を持つ。侍ジャパン同様、アジアでしのぎを削り合う宿命のライバルであり、選手たちも「子どもの頃から見てきたWBCで、韓国にはいつも苦しめられてきた」と口にしていたほど特別な意識を持っているという。
そんな韓国との試合は壮絶なものとなった。逆転されても取り返し、主将のチェン・ジェシェン選手が体を張った走塁でチャンスを広げる。最後はタイブレークの末に台湾が勝利をもぎ取った。
「この勝利で、若い世代の選手たちは『自分たちは韓国にも勝てるんだ』という確固たる自信を手に入れました。2024年のプレミア12優勝は大きなマイルストーンでしたが、メジャーリーガーも参戦する最高峰の国際大会ともいえるWBCで、初めて韓国に勝ったことの意義はそれ以上に大きいでしょう。
国際社会で台湾が置かれている状況を選手たちも当然理解しているので、世界に台湾の力を証明できたというのも非常に大きいはずです」(駒田さん)


