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“守備職人”ベイスターズ・大和が33歳で打撃に開眼 きっかけは佐野恵太の一言だった

文春野球コラム ウィンターリーグ2021

2021/01/30
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プロ15年目で感覚を掴んだきっかけ

 きっかけは佐野恵太の一言だった。

「回転するイメージです」

 打ちに行く時の体の開きが改善点だと思っていた大和。「振り」にいくとどうしても開いてしまう。左右の違いはあるものの、佐野にアドバイスを求めたところこの言葉が返ってきたという。「15年目にしてやっとわかった気がするわ~!」。目尻を下げると解説が止まらなくなった。

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「自分がこうやってると思っても人からみたらそうでもないことってあるやん? だから佐野もあくまで感覚の話をしてくれたんやけど。バットを振ろうと思うより、相手投手の球のスピードと回転することで生まれる遠心力を利用する。バットとボールがぶつかる瞬間だけ力を入れる感じ、パンッて。もちろん体が開いたらこれはできひんから、背中で打ちに行くイメージ。ピッチャーに背中を向けるくらいの感覚でそこから回転して上から叩くイメージ」

 説明を聞くと、今までにも聞いたことのあるような理論のような気がしないでもないのだが、おそらく大和自身も頭でわかってはいながらも「感覚的にしっくりきた」のはプロ15年目でやっとのことだったのだろう。

 体現されたのはシーズン終盤10月10日の甲子園での阪神戦だった。7番遊撃手でスターティングメンバーに名を連ねた。4回、ソトの同点本塁打直後に右前打を放つと、6回、今度はソトの勝ち越し本塁打後に第3打席がまわってきた。背番号9がマウンドに立つガンケルに向けられる。2ボール2ストライクと追い込まれた5球目のスライダー。クルン。回転して放った打球は左前打となった。

「シーズン終盤やったけど、この打席が一番しっくりきた。この感覚か!って感じ!」

 実際10月の月間打率は.368、11月は6試合15打席ではあるが.417で、感覚を掴んだということが数字にも顕著にあらわれている。

 現状維持は衰退と同じというが、34歳のシーズンを迎える大和はまるでルーキーのように様々な打撃技術・理論に興味をもち、進化の一途を辿っている。3割打者と同等の価値を誇る守備職人が打撃で開花するとまさに鬼に金棒である。2021年、新たな大和の姿がみられそうだ。

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