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化学兵器の神経剤によって毒殺されかけたナワリヌイ氏

 ナワリヌイ氏は、昨年8月、統一地方選を前にシベリア各地を行脚した後、モスクワに戻る機中でこん睡状態に陥った。後に、化学兵器の神経剤によって毒殺されかかったことがわかり、長期療養のためドイツへ渡航。治療のかたわら、今回の動画の作成に携わり、1月18日にロシアに帰国した直後に再び拘束された。過去の有罪判決による執行猶予の条件を守らなかったなどの理由で、今後、数年間の服役の有罪判決を受ける恐れがある。

モスクワの拘束先からテレビ回線を通じて裁判所の審理に臨むナワリヌイ氏 ©時事通信社

 ナワリヌイ氏のチームは「プーチン宮殿」の建設に関わった業者らから見取り図や豪華家具など内装情報を独自に入手。最初の告発者、コレスニコフ氏のインタビューや行政機関への照会で登記簿上の記録を照らし合わせ、いったい誰が開発にかかわったのか、支払われた金額はどれほどになるのかを1つ1つ突き詰めていった。

ロシアで最も秘密めき、最も警備が手厚い施設

 判明した「宮殿」の敷地面積はモナコ公国の国土の39倍の7800ヘクタールにも及ぶ。周囲をFSBが警備し、近くの街から入るときはいくつかの検問所を通過しなくてはならない。海からも沿岸に近づくことは禁止されている。この敷地内では今も「数千人の労働者」が働いており、内部にはカメラ付きのスマートフォンを持ち込むことを禁じられている。さらに、内部に進入する車は国境通過のような厳重な検査を受ける。

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 そうした厳しい条件にもかかわらず、ナワリヌイ氏のチームは果敢に内部の状況把握に努めた。数人が近くの港町からゴムボートで沿岸に近づき、ドローンを飛ばして、上空からの撮影に成功。動画ではこれまで集めた数々の情報を詳細につなぎ、一部をコンピューターグラフィックスで再現した。

プーチン宮殿の間取り図 ナワリヌイ氏のユーチューブチャンネルより

 ナビゲーター役のナワリヌイ氏は動画でこう語った。

「誇張なしで言うが、(この宮殿は)ロシアで最も秘密めき、最も警備が手厚い施設だ。これはダーチャ(別荘)でもなく、カントリーハウスでもない。いうなれば、都市そのものであり、王国なのです。難攻不落のフェンス、独自の港、独自の警備員、教会やアクセスする際の独自の態勢まで完備されている。そして上空は飛行禁止区域に設定されていて、独自の国境検問所まである。これはロシア国内にある1つの独立した国家なのです。そして、この国家には唯一のかけがえのないツァーリ(君主)がいます。そうプーチン氏です」