労働環境のブラック化が問題視され、さまざまな働き方改革が進められている教育業界。しかし、抜本的な改善が果たされているとはいえないのが現状だ。実際に現場で働く教員たちは多忙を極める仕事、改善されない環境について、いったいどのように考えているのか。

 ここでは教育ジャーナリストの朝比奈なを氏の著書『教員という仕事 なぜ「ブラック化」したのか 』(朝日新聞出版)を引用。あまりの多忙さゆえに、非常勤講師として働く道を選んだ現役教員の大木さん(仮名)が考える“現状”と“課題”を紹介する。(全2回の2回目/前編を読む)

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教員採用試験を受け続けて

 大木さんが教員採用試験を受けた時期は高倍率の時代だ。大学4年の時、採用試験を受けたが合格はできず、翌年は人口急増地域にある公立中学校で常勤講師を務めた。「その市は昔から荒れた生徒が多いと噂だったので、覚悟して行きました」と彼女は当時の心境を語ったが、「でも、予想よりも大変じゃなかった。教員には若い人が少なく、全員が団結していました。仕事も多かったけど、全ては子どもたちのためと思えて納得していました」と続けてくれた。もちろん、長時間勤務で、実家に戻ると夜11時を過ぎる時も少なくなかったそうだ。

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 翌年は別の市で常勤講師を務める。この中学は部活動が盛んで、彼女は非常に強い女子バレー部の顧問としても奮闘した。

 この年に採用試験に合格して正規の教員となり、その後10年間働いた。「この10年間は毎年仕事量がどんどん増え、忙しさが増していく年月、そして仕事での時間の使い方に悩む年月だった」と苦い表情で彼女は語った。

クラス担任の忙しさ

 授業の持ち時間は多い時で週23時間だった。こう聞くと、週の授業コマ数は基本的には30時間なので空き時間があると思われるだろうが、その時間は打ち合わせや生徒対応に費やされる。放課後は学年や分掌の会議、部活動の指導が入り、それらが終わるのが午後6時半頃。それから保護者への電話連絡や事務仕事、教材研究にようやく取りかかる。勤務を数年積んだ後は、国語科主任や道徳主任、保健主任なども務めるようになった。小・中学校では、初任者がクラス担任となる、勤務数年で主任を務めることなどがまれではない。これは、同じ公立学校でも高校とは大いに異なる点だ。

 さまざまな仕事をこなす中で、クラス担任の仕事が最も忙しい反面、最もやりがいがあると大木さんは思っている。「担任をしながら、一人の生徒の成長を感じることができる瞬間が教員として嬉しい時です」と彼女は言う。そして、「生徒の前では暇そうにしていました。その方が、生徒が声をかけて来やすいと思って」とも語った。生徒一人一人を大切にしたい、生徒が自分から彼女に近づいて来てくれるのを待ちたいという彼女の思いがわかる。