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《東京五輪は本当に実施可能なのか?》100人以上が毎日抗原検査、PCR検査は週に4回…スタンフォード大に見る五輪開催の「リアルな可能性」

2021/02/05
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抗原検査で陰性になると、スマホにQRコード表示

 また、大学内ではゾーニング=個々人の移動できる区域分けも徹底されていました。

 選手とスタッフはアプリを使って毎日10程度の質問に答えないと大学内に入れません。回答すると大学への立ち入りを許可する知らせがスマホに送られてきます。もし取得せずに大学に入ると、即アラートが飛んでくる。そういった形で管理することで、大学側がどこに何人、誰が居るのかを監理できるようにしていました。

キャンパスへの立ち入り許可画像 ©️Tsyuoshi Kawata

 試合会場でも、スタート4時間前の抗原検査で陰性になると、スマホにQRコードが表示され、それを会場入口の読み取り機にかざして入場となります。抗原検査の結果が遅れてギリギリまで選手が会場に入れない…というようなトラブルもありましたが、そればかりは試行錯誤の中ですし、仕方がないのかなと思います。

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試合会場へ入るために必要なQRコード ©️Tsyuoshi Kawata
試合会場での検査車 ©️Tsyuoshi Kawata

 ただ、これだけのことをやっていても、感染の拡大を0にすることはできません。

 ご存じのように日本よりもアメリカは感染者の数も多いです。しかし、日米のスポーツ関係者や政府関係者と話して感じるのは、これに関しては日本の政策が成功しているというよりは国民性が大きいのかなと思います。

2021年、東京五輪開催の可否について

 日本人はマスクをすることに抵抗が少ない人が多いですし、いい意味で周囲との協調性もある。一方でアメリカはよくもわるくも個人主義。マスクをしない人を糾弾する空気も少ないですし、そもそも保険も国民皆保険というわけではありませんから、病院にもギリギリまで行かない人が多かった。

 そういった部分が感染を拡大させた要素であり、実際にスポーツの現場で行っている検査体制や運営については、アメリカの方が日本よりもかなり力を入れているように思います。それでも感染が止まらない以上、東京五輪でも感染が広まる可能性はあり得ると言わざるを得ません。

 もちろんいま、日本の五輪関係者の皆さんは必死に準備に取り組まれていますし、話を聞いていてもその備えは非常にしっかりと進んでいるように感じます。ただ、敵は未知のウイルスだけに、今後世界的にどんな展開を迎えるかは誰にも分からないと思います。

 だからこそ考えてほしいのが、もし五輪ができなかった時のことです。

 日本では有力アスリートの「もし東京五輪がなくなったら、大げさに言えば死ぬかもしれない」という発言が報じられていました。これは個人的に非常に悲しい出来事でした。

 もちろん私もスポーツに携わる者ですし、代表として世界大会で戦った経験もありますから、五輪が開催されてほしい気持ちは大きい。でも、仮にそれがなくなったとしても、スポーツの価値はそれだけではないと思うのです。五輪にしかその価値が見いだせないとするならば、それこそが日本のスポーツ界が見直すべき部分ではないでしょうか。