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「体系化」できる力と「判断力」が身についた

――高校生活最後のクイズに臨むにあたって、ふたりはどんな対策をしたんですか?

木多 とにかくブランクがあったので、早押しでは他校に勝てないだろうなと。そこで、自分の得意分野に特化して、それだけはポイントにできるようにしようと思って、僕は時事問題対策をやりました。過去1年間のニュースをざーっとおさらいして、それをもとに200問くらい問題を作って覚えました。問題を作ること自体が、問題を先読みして早押しするためのトレーニングになるんです。そしたら本選で3、4問同じ問題が出たんですよ。作戦成功でした(笑)。

中島 私は芸能系の問題対策をしました。高校生クイズは時事と並んで芸能問題が出やすいんです。それで、日本テレビのクイズを作っている人が読んだり見たりしていそうな情報源は何だろうと考えて、あたりをつけて知識を入れたりしました。

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「クラスは一緒だけど席はけっこう離れてるんです。私はあっち」「僕はあっちです」

――想像以上に傾向と対策を練って実践してるんですね……。

木多 戦いが終わったあとに他の学校の子と話していたら、他の高校とかも同じような対策を練っていたみたいで、「お、自分たちのやってたことは間違ってなかった」って、ホッとしました(笑)。

――クイズに強くなることって、自分たちにどんな力を与えてくれていると思いますか?

中島 うーん……。知識を蓄えることがクイズに強くなるための第一歩だと思うんですけど、その蓄積の方法は自分なりに作れたのかなって思います。あえて言うと「体系化」できる力とでも言うのかな。たとえば私は日本史が好きなんですけど、テストの点数が伸びなくて(笑)。でもあるとき、キーワードだけ覚えても知識として頭の中に留まってくれないことに気が付いたんです。それで、バラバラだったキーワードを、クイズの問題を作るように一つながりの文章にして覚えるようにしたら、ちょっと日本史が得意になりました。さっき木多くんが言っていたように、クイズって解くだけじゃなくて、答えから問題を作る能力も重要なので、部分から全体を構成できる力みたいなものは養ってくれているのかもしれないですね。

木多 「選択力」とか「判断力」みたいなものは身に付いた気がします。さっきクイ研の早押し練習を見ていただいたと思うんですが、早押しクイズ問題って、問題文の中に答えが確定するポイントがあるんです。だいたいここまで読んだらこの答えしかない、みたいな。クイズプレイヤーはその「確定ポイント」を正確に判断し、いかに早く押せるかの勝負をしているんです。極端な例で言うと問題で「化学式でC11……」ときたら、この部分で答えはもうだいぶ絞られて、その中で一番出るのはテトロドトキシンなんです。そういう、反射神経、勘みたいな力はついている気がしますね。

 

このペアは個人じゃ全然ダメなんですよ

――それにしても、お互いにこのペアだから優勝できたという理由は何だと思いますか?

中島 やっぱり、お互いに特化している部分があるからだと思います。特化というとカッコいいですけど、要は興味のある問題しか答えられない(笑)。

木多 逆に言うと、苦手な問題は完全に捨てて、片方に任せられる。たとえば開成は男子校だから女子問は弱点。そこは中島さんに任せたって感じですね。で、その分、自分が勝負できる問題は絶対に取るっていうコンビネーションがあったからかな。

中島 そうなんですよね。だからこのペアは、それぞれ個人でクイズ大会に出たら全然ダメなんですよ、オールマイティじゃないから。ペアだから起こせた奇跡なんだと思ってます(笑)。

後編「エリート開成に勝利“さわやかクイズカップル”を生んだ「桜丘高校」の秘密」に続く)

 

写真=佐藤亘/文藝春秋