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最強の深夜番組『相席食堂』を生んだ“3枚の企画書” 千鳥が覆した「視聴率のセオリー」とは

『相席食堂』髙木伸也プロデューサーに聞く #1

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「ちょっと待てぃ!」。その声がスタジオに響き渡るたび、爆笑が生まれる――。千鳥がMCを務める『相席食堂』(朝日放送テレビ)は、関西ローカルの深夜番組でありながら、2018年の放送開始以後、斬新な笑いと熱狂的なファンを生み出し続けている。

「TVer」、「Amazon Prime Video」、「Netflix」、「GYAO!」などを通じて全国で視聴できるため、その人気は関西以外にも広がり、昨年の「最近話題になった動画配信サービス番組」のランキングでは、『ドキュメンタル』らを抑え、バラエティ番組ではトップに立った(「LINEリサーチ」2020年9月期調査)。

千鳥がMCを務める『相席食堂』 ©ABCテレビ

 2月2日(火)には、番組史上初の全国ネット、ゴールデンタイムでの2時間スペシャルが放送される。タレントがロケ先で現地の人と「相席」し、そのVTRに千鳥がツッコむ。そんな一見シンプルな番組が、なぜここまで注目を集めているのか。番組を立ち上げた髙木伸也プロデューサー(39)に、制作の裏側を聞いた。(全2回の1回目/後編に続く

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◆ ◆ ◆

――まさかの全国ネット、しかもゴールデンタイムでの放送決定は、発表後の反響もかなり大きかったのではないでしょうか。

髙木 関西ローカルの番組で告知しただけなのに、すごい反響があるな、と思いました。特にSNSでは賛否両論巻き起こっていて。ノブさんもTwitterで4発くらい連続で呟いてくれたんですけど、全部ネガティブなコメントでしたね(笑)。

【Twitter】千鳥ノブのツイート
 

――賛否の「否」というのは、いわゆる「深夜番組がゴールデンに行くとうまくいかない、つまらなくなる」という意見ですよね。

髙木 『相席食堂』も「ゴールデンじゃない」って言われますね。でも、中身を変える気はないですし、実際に収録も終わったんですけど、ちゃんといつも通りの『相席食堂』だったので。「否」の人も、番組に期待してくれていたり、興味を持ってくれていたりする方だと思うので、そこには絶対応えたいなと思っています。

始まりは「出演者GACKT」と書かれた企画書

――『相席食堂』はちょうど3年前(2018年1月)に、まずは単発の特番として放送されたのが始まりでした。このとき、企画としてはどのくらい前から動いていたのでしょうか?

髙木 これはちょっと恐ろしい話なんですけど、11月の半ばに会社の先輩から「この企画やらへん?」って言われたのが最初だったんです。

――放送まで2ヵ月もないですね! その段階ではどんな企画だったんですか。

2月2日(火)に放送される「一夜限りのゴールデンSP」では、M-1ファイナリスト全10組が再集結 ©ABCテレビ

髙木 先輩からもらった企画書は3枚しかなくて、1枚目にはタイトル「相席食堂」と書いてあるだけ。で、2枚目にいくと「この番組では、有名人が田舎の食堂に行きます。もちろん、その食堂に有名人のサインはありません」と。これでまぁ、なんとなく番組の空気感は伝わるな、と。でも、書いてあったのは本当にそれだけなんですよ。それで3枚目には「出演者」とあって、めちゃくちゃでかい写真付きで「GACKT」って書いてありました(笑)。

――ざっくりとした企画案ですね(笑)。

髙木 こんなざっくりした企画書は見たことがないですね。ただ、声をかけてくれた先輩は、「特番の枠があるから、この企画書で何をしてもいいよ」という感じだったんです。このご時世、そんなことってまずないんですけど、本当に運良く声をかけてもらって。