またも優勝することはできなかったものの、チームは3位にすべり込んで、CSに出場した。僕は4試合に登板して無失点に抑えたが、ファイナルステージで巨人に敗れて、2019年の戦いは終わった。
球団側からの強い慰留によって、そのシーズンが終了した時点での引退は実現しなかった。そのシーズンの好成績を考えても、4月に僕が引退を決意したことは、早計だったのかもしれない。
だが、それは結果論だった。僕の肩と肘がもはや限界だったことに変わりはなかったし、コンディションの調整に手間取る状況にも、変化はなかった。
僕自身、いつやめることになっても、後悔はなかった。ただ、球団側にも事情があることは、僕にもわかっていた。僕の引退は、2020年にもち越されることになった。
シーズンオフに行なわれた契約更改のあと、記者会見の場で「単年契約か、複数年契約か」という質問を受けた。僕は「単年です。それ以上する気はありません」と冗談めかして答えたが、それは僕の本音だった。
「右腕一本」でいくと決めたから、わかった瞬間
2020年、新型コロナウイルス感染症の蔓延という想像もしなかった事態によって、プロ野球界も大きな影響を受けたのは、ご存じのとおりである。例年より大幅に遅れて、6月19日にシーズンが開幕した。
最初のアクシデントが起こったのは、6月3日のことだった。甲子園で行なわれた広島とのオープン戦に登板したとき、腰を痛めてしまった。まだ万全のコンディションではなかっただけに、それがきっかけでフォームを崩した。開幕を迎えても、思うように体が動かない状態が続いた。
シーズンがはじまって2試合目の登板となった6月25日の対ヤクルト戦では、1点差でリードしていた9回裏、抑えとしてマウンドに上がった。だが、3ランを打たれて、チームはサヨナラ負けを喫した。
