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 開幕直前に腰を痛めたことでフォームが崩れ、肩と肘への負担が増していた。いったん仕切り直すべきだと思った僕は、7月半ば、10日間ほど戦列を離れ、2軍で調整に努めた。

 その後、1軍に戻って登板した数試合は自責点ゼロに抑えたのだが、8月8日の対広島戦に登板したとき、再びアクシデントに見舞われた。このときは右肘だった。投げた瞬間、バキッという音が聞こえた気がした。

 壊れた―。

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 注射のおかげで痛みはなかったが、僕の肘はついに修復不能に陥ってしまったことが、はっきりとわかった。

チームドクターにかけられた言葉

 その数日後、僕は再び戦列を離れた。そして、あらためて球団側に引退の意思を伝えた。だが、なおも慰留された。僕の肘が壊れてしまったのは明らかだったが、球団側の理解を得るため、チームドクターの診断を仰ぐことにした。

 右肘のレントゲン画像を見ながら、僕はドクターに率直な見解を尋ねてみた。

©iStock.com

「これは、あかんな」

 ドクターの見立ては、明快だった。肘の骨が、遊離した骨とぶつかって削れてしまい、その部分に穴があいているという。僕が18歳で阪神に入団したときから、お世話になってきたチームドクターだった。

「ひとつだけ教えてください」

 僕は、6年前の冬、ニューヨークのカフェでヤンキースの担当者と向かい合っていたときのことを思い出していた。

「もし、この画像の選手と契約するかどうかで迷っていたとしたら、先生はどうしますか」

「取らんわな」

 表情も変えず、ドクターはあっさりとそう答えた。ドクターチェックに引っかかるのは、これで二度目か。そう思うと、何やらおかしかった。

「わかりました。ここまで投げれば、大往生でしょ」

「まあな。よう投げた。こんな状態になるまで、よう投げたよ」

 僕は、最後に気になることを聞いてみた。