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フィクションか現実かわからなくなる感覚を楽しんでほしい

――パパ活を取材されて、問題に感じたのは?

志駕 若い世代が奨学金返済や生活苦で追いつめられている現状ですね。とくにこれからはコロナ禍の影響で就職難になっていくから、一層苦しくなるでしょう。私が今一番憂いていることは、今の日本の若者には夢や希望が感じられなくなって、ある種の諦めを感じはじめていることです。小説の中の主人公が、パパ活をやる時に感じた気持ちはただのフィクションではないと思っています。

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 でも、苦しさばかりを見つめていても光は見出せません。希望を忘れないでほしいという願いを込めて執筆しています。

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 今作は過去と現在の2つの時間軸が同時に進み、時間が合わさる瞬間に事態が解決へと向かっていきます。

 コロナ禍ということもあり、リアルな事件やスキャンダルもふんだんに盛り込みました。途中からは、「フィクションなのか現実なのかわからない」という方も出てくるでしょう。そういう感覚を楽しんでいただけると嬉しいですし、読んだ後にはぜひ意見を聞かせてほしいですね。

 新作の『絶体絶命ラジオスター』(毎日新聞出版)では、SFやコメディタッチもいれて書いています。私が長年勤めてきたラジオ局を舞台に、ディレクターならではのトリックも使いました。今作とは毛色が違いますが、どちらも楽しんでほしいです。

(取材・構成:ゆきどっぐ)

志駕晃/1963年生まれ。大学卒業後、ラジオディレクターとして『オールナイトニッポン』などの番組制作に携わる。2017年、『スマホを落としただけなのに』(宝島社)で第15回『このミステリーがすごい!』大賞・隠し玉を受賞し、デビュー。同作はシリーズ化し、映画化もされた。

彼女のスマホがつながらない

晃, 志駕

小学館

2020年12月17日 発売