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「“性的関係あり”でも仕事だと割り切れないなら続かない」 20年間パパ活で稼いだ女性が明かす“恋愛感情”とは

小説家・志駕晃さんインタビュー#2

2021/02/08
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キャバクラとの違いは「応援したい」という気持ち

――お金のためのパパ活。同じように金銭が発生するキャバクラと似ているように感じますが、違いはどこにあるんでしょう?

志駕 一番の違いは、キャバクラは疑似恋愛でお金をひっぱるけど、パパ活では女性のピュアさと性格の良さ、将来の夢に投資することでしょう。

 中には、偏差値の高い大学に通っている女子大生もいます。これは男性受けがいいという理由もありますが、「いい思いをするためにはすれていない必要がある」というパパ活のシステムが根底にあります。

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©iStock.com

 交際クラブやラウンジで知り合った男性は、キャバクラには行き慣れているお金持ちが多い。余裕があるから、性的な関係はなくてもガツガツせずに女性にお金をそそぎます。

――なるほど。若い人を応援する年長者の気持ちもあるんですね。ちなみに、パパ活は東京などの都市部に限る話なんですか?

志駕 いいえ。小説では、関東圏のお嬢様大学に通う女子大生を登場させていますが、地方にも交際クラブはありますし、アプリはどこでも利用できますから、全国に広がっています。大阪や福岡などで会うのも一般的でしょうね。男性側が「出張先まで遊びにおいで」と女性を呼ぶこともあります。

連載当初は東京オリンピックを結末にする予定だった

――小説を上梓して、パパ活をしている方々から反響はありましたか? 

志駕 SNS上で「良いパパ、悪いパパが詳細に描かれているから読んでほしい」という盛り上がりが一部のパパ活女子の間でありました。どのくらいの層が読んでいるかという正確なことはわからないですが、当事者から読んでもパパ活の危険な場面がわかるようです。それに、男性から見ても「女性の気持ちが理解できる」という需要はあると思います。

『女性セブン』で連載を追いかけてきた読者からは、始まったばかりの頃に、「パパ活に興味があったから面白い」「若い頃に私もやっておけばよかった」という声がありましたね。ただ小説の後半になるとコロナ禍のニュースと絡まった展開になっていくので、「ニュースだと難しくてわからなかったことが、小説だと理解できる」という感想も聞かれました。

『彼女のスマホがつながらない』(小学館)

――確かに。小説ではコロナ禍のニュースをふんだんに取り入れていますよね。

志駕 そうなんです。連載当初はコロナ禍がここまで長引くとは思っていなかったので、小説のラストは、東京オリンピックの話にしようと思っていました。でもだんだんと雲行きが怪しくなり、東京オリンピックを延期するという決定が下されましたよね。その時には、「もう連載不可能なんじゃないか」と落ち込みました。

 でも、8カ月におよぶ連載の中で、「いっそのこと新型コロナウイルス感染症の影響も使おう」と腹をくくったら、乗り越えられました。それからは毎日ハラハラしながらニュースを見守って、どう小説に落とし込もうかと頭を悩ませました。結果的に、コロナ禍の移り変わりを面白く取り入れられたかなと思っています。