Bさんは緊急事態宣言で出勤日が減り、その日は在宅していました。見かねて妻の暴力を諫めようとしましたが、「口で言っても分からないんだから当然でしょ!」と悪びれる様子はなし。対応に困ったBさんが、筆者の事務所に相談に訪れました。
一通り事情を聞いた後に「奥様は残念ながらいわゆる“毒親”になってしまっていると思います」と話しました。
Bさんが長男に話を聞くと、実は志望校は母親が決めたもので、本人は「その大学へ進む意味を見つけられていない」という状態でした。そこでBさんが「自分がやりたいことは何かあるのか?」と尋ねると、「臨床工学技士」と答えました。Bさんの父、つまり長男の祖父が長く人工透析を受けていたのを見て感化されたそうです。
しかし、これも家族内で問題になりました。長男が通う高校は、大学進学率95%の進学校。専門学校への進学率は0%。しかし「臨床工学技士」になるためには、専門学校に進むのが最短ルートです。そのことに妻は「せっかく大学の付属高に入れたのに、専門学校へ進むなんてありえない!」と猛反対。Bさんが「本人の意思を尊重しよう」と粘り強く説得し、納得はしなかったものの「勝手にすれば」と諦める形で決着しました。
Bさんが長男とちゃんと話したのはなんと8年ぶりだったそう。妻の過剰な教育方針に気が付いたのも、父と子が腹を割って進路相談ができたのも、コロナ禍で増えたステイホーム時間を有効に活用できたからでした。
その後、Bさんは子供の受験を応援することに専念し、妻との関係をどうするかは長男の受験後に再検討することにしたようです。
定年後に目立ちはじめた価値観の違い
3人目の相談者・Cさん(62歳)は、「家内がいつ癇癪を起こすか怖くて怖くて」と助けを求めてきました。自動車ディーラーで整備士として働いていたCさんは60歳で定年退職しましたが、今も同じ整備工場で週3日働き続けています。すでに長男は自立し、2歳年下の妻と2人暮らし。
これまでは週末だけだったものが週に4日一緒に過ごすようになり、緊急事態宣言で工場がストップすると、週7日同じ家の中で過ごす生活に。すると、些細な価値観の違いが目につくようになってきたと言います。Cさんも「夕飯はまたレトルトか」「夕立が降る天気予報なのに洗濯物を干すなんて」と不満をためていましたが、喧嘩の決定的な原因になったのはコロナウイルスの感染対策における意識の差でした。