なにより怖いのは、着付け講師が売り手に全面的に協力してしまうところだ。初めての販売会で、生徒は引率の先生を頼りにするしかないのに、裏切られた気持ちになるだろう。それとも巧妙な販売マニュアルによって、「せっかく先生が時間をかけて選んでくれたのだから、断ったら悪い」と思わせてしまうのだろうか。
講師に販売ノルマが課せられていることも
なぜ、無料や格安の着付け教室でこうしたことがおこるのか?
Aさんは、大きな問題点は主にふたつあるという。
「ひとつは、講師それぞれに着物の販売ノルマがあることです。達成できなければ、ノルマが自己負担になるケースもあると聞きます」
もうひとつは、着付け教室の運営にかかる経費をメーカーや卸問屋が負担しているという点だ。
「広告制作費や家賃、光熱費を負担するかわりに、教室運営者にたくさんの生徒を集めてもらい、そこで着物や帯を販売するのです」
無料・格安着付け教室というのは、先行で負担した高額な経費を着物販売で回収するというひとつのビジネスモデルなのだ。
「どんな着付け教室も、最初は『押し売りはない』と説明します。でも経費負担をするメーカーや問屋がいる以上は、販売なしに運営は成り立ちません」
こうした仕組みがわかってくると、販売ノルマを課せられる着付け講師もまた、被害者という気がしてくる。
行ってもいい着付け教室
それでは、有料の着付け教室に通えば安心かというと、話はそう簡単ではないらしい。生徒が受講料を払っていても、着付け講師に販売ノルマが課せられているケースもゼロではないというのだ。
同社の公式サイト内で、私がもうひとつ注目したのは、ステルスマーケティングの問題を扱っている記事だ。これは口コミサイトや比較サイトなど、中立的な立場で批評を装い、消費者に宣伝と気づかれないようにした広告宣伝手法で、略称「ステマ」と呼ばれている。
Aさんは、着付け教室を探すとき、口コミやランキングは「ステマではないか?」という意識を持っておいたほうがいい、と話す。