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「無料やワンコインの着付け教室があるなかで、あまりに高い受講料では生徒が集まらないという厳しい現実があります。低価格で良心的な教室をめざすと、低コストでの運営は欠かせません」

 Aさんは、テレビや雑誌など多額の費用がかかる広告は使わない、賃料の高い駅前の一等地のビルなどに教室を出さない、事務処理をITの導入で省力化するなど、低コストでの運営の工夫についても説明してくれた。

「生徒さんは、ご自宅にあった着物やご親戚などから譲られた着物、リサイクルショップで購入した着物など、それぞれお好きなものを利用されています。素材も正絹だけでなく、ポリエステルや麻、綿など、いろいろです」

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 あまりに着物の丈が短いなどサイズに問題がある場合を除いて、手持ちの着物で受講可能というAさん。また同社は着物メーカーでもあり、購入してそのまま着られる既製品の着物が10000円前後、襦袢は5000円前後から取り扱っているという。

 こうした着付け教室は、業界全体ではめずらしいのかもしれないが、探してみれば地域密着型のカルチャースクールの着付けコース、小規模経営の教室、個人運営の教室もあるはずだ。ただそうしたところは派手な広告をうたないだけに、リサーチにはそれなりに時間をかける必要がある。

 これは着物をやりはじめて知ったのだけれど、最近は着付け講師や着物スタイリスト、リサイクル・アンティーク着物ショップのオーナーなどが、SNSを通じて自分の着物姿やコーディネートを公開している。そこから好みの人をフォローして、教室やレッスンの実施について問合せをしてみるのもよさそうだ。

©iStock.com

 今どきは、YouTubeを検索すれば「はじめての着付け」「初心者でもできる着付け」などの動画がたくさん出てくる。私自身は、早々に“親戚のおばちゃん”問題(※編集部注:著者自身が着物を自ら着付けた際、似合わない着物を選んでしまったがために鏡に映る自身が老け込んで見えてしまった)にぶちあたってしまったので無理だったが、人気ユーチューバーの運営サイトの書き込みを見ると、動画だけで着付けを覚えた人が少なくないこともわかる。ひとまず着てみたいと思うなら、今やリアルな教室にこだわる必要はないのかもしれない。

着物の国のはてな

片野 ゆか

集英社

2020年9月25日 発売