セルフ式のガソリンスタンドには、どこか気が抜けない雰囲気がある。
従業員による誘導がないことで、「どのように振る舞えばいいか」について明確な正解がないからだ。「セルフが苦手」という人たちは、おそらくテーブルマナーを知らずにフレンチの席に着かされたかのような思いがするのだろう。
セルフ式スタンドの恥ずかしい失敗
実際に、セルフ式スタンドにおいては日々さまざまな「恥ずかしい失敗」が起きている。「軽自動車に軽油を入れた」という話はよく聞く話だが、給油口キャップの閉め忘れやガソリンの吹きこぼしなど、不慣れであるがゆえの失敗は日常茶飯事だ。
「一般財団法人 日本エネルギー経済研究所 石油情報センター」の調査では、2020年3月の段階で、全国のガソリンスタンドのうちセルフ式のものは34.8%を占める。年々ガソリンスタンドの軒数が減っているなか、セルフ式スタンドは増加しており、「セルフは苦手だから避ける」ということができない場面も出てくるかもしれない。
「人の振り見て我が振り直せ」というわけで、スタンドで起きた「恥ずかしい失敗」から学んでみるのも悪くないだろう。実際にガソリンスタンドに勤務している、あるいはかつて勤務していたスタッフ達から、印象的な“ヤバい客”について話を聞いてみた。
「レーン間違い」の末に……
「給油口の位置を間違え、反対側のレーンに入ってしまう」という失敗は、セルフ式スタンドにおいて最もよく見られるものだろう。セルフに慣れていても、レンタカーなど普段と違う車に乗っている時にはつい間違えてしまうこともある。
間違いに気づき、すんなりレーンを移動することができればよいが、焦りがさらなる失敗を呼ぶケースもあるようだ。
「逆側のレーンに入っちゃったら、一旦前に出て、バックで隣のレーンに入れればOKじゃないですか。でも結構、ぐるっとUターンして逆側のレーンにつけちゃう人がいるんですよね。逆のレーンに移ったのはいいんですけど、車の向きも逆になってるんで……」
当然、給油口の位置は逆のままである。
スタンド内で右往左往する車の姿はなんとも滑稽だが、このような動きをする客はさほど珍しくないという。