「『開業医はコロナ患者も診ずに、私腹を肥やしている』とか、『開業医はカネ持ってるから、高級車を乗り回して、ヒマしてんだろ』みたいな批判があることは知っています。でも、本当に黒字で潤っているのは美容外科などをやっている一部の開業医だけ。多くの開業医はそもそもそんなに潤っているわけではありません。はっきり言って、赤字です。でも、みんなギリギリのところで通常診療をこなしながら、その一方でコロナ患者をなんとか救うための努力をしている。僕ら開業医が『悪者』のように言われることは、本当に我慢ならないですね」

 こう明かすのは、都内でクリニックを経営する耳鼻科医のA氏だ。A氏の元には乳幼児から高齢者まで幅広い世代が通院している。

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「誤解を恐れずにいえば、医師の7割はヒマになっています」

 政府は2月2日に10都府県に及ぶ緊急事態宣言を3月7日まで1カ月延長することを決めた。新規の感染者数は減少傾向にあるものの、医療ひっ迫の状況が未だ改善されないことが延長の決め手となった。

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 医療ひっ迫解消のための“次なるポイント”と言われているのが、日本の病床の7割を占める「民間病院」でコロナ患者の受け入れが、なぜ進まないかだ

 1月6日、日本医師会の中川俊男会長は民間病院のコロナ患者受け入れが少ないことを記者会見で問われ、「コロナ患者を診る医療機関と通常の医療機関が役割分担をした結果だ。民間病院は面として地域医療を支えている」と答えた。しかし、その「役割分担」がうまくいっていないと嘆くのは、コロナ患者を実際に受け入れている中規模病院の勤務医だ。

日本医師会中川会長 ©時事通信社

「誤解を恐れずにいえば、今医師の7割はヒマになっています。コロナ患者を診る医療機関は圧倒的に忙殺されている一方、通常の医療機関は、コロナで患者が減って閑古鳥が鳴いている。しめつけられているのは、地域の中核病院で、全体のマネージメントをしながら、現場もみて、受け入れもして、コロナでの損失をカバーできなかったら、お前らの責任だと上から責められる現場の『勤務医』です。一方で槍玉に挙げられているのが、『開業医』です。医療崩壊の一因が開業医にある、という声もある。忙殺されている勤務医からは『ヒマの状態になっている開業医たちに、コロナ対応にあたってもらうべき』という怒りに近い声も上がっている。実際に都内では第一波のころに『発熱患者お断り』という張り紙がされていたり、患者が実際に発熱をして診てもらおうと電話をかけると『発熱のある方は診察していません』と応対するクリニックもありました」