「なぜ開業医がコロナの最前線に行かないのか」
コロナを診ている勤務医が激務に耐えている一方で、「ヒマをしている」のが開業医であるという指摘だ。こうした「開業医がコロナを診ないのが今の医療崩壊の一因だ」とする批判に対して、前出のA氏が反論する。
「『なぜ開業医がコロナの最前線に行かないのか』と糾弾するような声があることは知っています。しかし、我々も普段の診療を日常的にこなす一方で、医師会の求めに応じて、ホテル療養の患者さんのオンライン診察、保健所やPCR検査センターでの検査のお手伝いなどを、診療時間外で行っています。
昨年の春にPCR検査の数が不足していた時期に東京都医師会が中心になって、東京都では、23区プラス市町村に計40のPCR検査センターを開設しました。その運営には開業医が広くかかわっています。われわれ開業医がコロナ対策に全く協力していないというわけではないのです。むしろ、医師会を通しての『協力要請』はファックスで毎日のように届きます。早晩行われるワクチン接種も私たち開業医が行います。
ただ、コロナ禍で、本業であるクリニックに来る患者数は減少しており、同じ医学部出身の開業医たちに聞いてもほとんどみんな赤字のようです。私の知り合いの耳鼻科では、昨年の緊急事態宣言下でもクリニックを開業していたのですが、3月下旬の給料日の次の日から、事務スタッフが突然やめてしまった。『コロナが怖い』『もしクリニックで感染した場合、同居する高齢の母にうつすと申し訳ない』という理由だったそうです。
開業歴が長い先生たちは貯金を切り崩しながら、人員やバイトの医師をカットすることで固定費を減らし、規模縮小を図っています。開業したばかりの若い先生は貯蓄もないので、みんな防護衣を着て、周囲に何と言われようと危険を冒してコロナ患者を診ているのが現状です」