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返ってきた答えは「てめえ、ムッシュと俺とどっち取るんだよ、馬鹿野郎!」

 和製ジャニス・ジョプリンと称された麻生さんは、ジャニスの「Move Over」などを熱唱。まあ、すごい歌い手だったよ。

 ちなみにこのライブ、村上龍の芥川賞受賞作『限りなく透明に近いブルー』に、ドラッグまみれの主人公たちが観に行くという形で登場してるんだ。

オウン・ラインズ/麻生レミ

 出番が終わってステージの袖にはけると、誰かがツカツカと俺の方に歩み寄ってきた。それが、かまやつひろしさん。「君のキーボード、すごくいいねえ。今度、僕は九州でツアーをやるんだけど、参加してくれない?」と言う。

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 俺はスパイダースのファンだったから、天にも昇る心持ちになっちゃってさ。すぐ、きっかけを作ってくれた裕也さんに報告したわけ。さぞかし喜んでくれるかと思いきや、返ってきた答えは「てめえ、ムッシュと俺とどっち取るんだよ、馬鹿野郎!」。

その後、かまやつさんと共演することは一度もなかった

 烈火のごとくという言葉はこういう時に使うんだなとしみじみ感じ入るほど怒られて、かまやつさんには「すみません。これこれこういういきさつでかまやつさんとご一緒することは一生無理だと思いますので」と電話で丁重に謝ったんだ。

かまやつひろし ©文藝春秋

 その後、かまやつさんとバンドで共演することは本当に一度たりともなかった。

 かまやつさんが亡くなった後に故人を追悼する番組があって、俺は、確かCharなんかと一緒にかまやつさんが作った楽曲を演奏したんだ。後日、その放送を観ていたという裕也さんが「あれ、よかったよ」と褒めてくれたんだけど、50年近く前のあの烈火のごとき怒りは何だったんだろうと思ったよ……。