週刊文春の連載が終わってしまって、どうしたもんかいなと思っていたら、こうしてオンラインで原稿が書けるとは。いや、捨てる神あれば拾う神あり。ありがたいことです。

 てな訳で心機一転。よろしくお願いいたします。さて。

年末年始の番組に出演したYOSHIKIとGACKT ©文藝春秋/時事通信社

コロナ禍の大晦日は家族と一緒に

 去年の大晦日の夜は——どれぐらいぶりになるのか——久々に家で過ごす羽目とはあいなってしまった。

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 無論いわずと知れた新型コロナウィルスのせいである。例年ならいたるところで当たり前にみられたカウントダウンの催しが軒並み中止という事態に、蟄居を余儀なくされた音楽家は決して私だけではあるまい。

紅白歌合戦2017リハーサル 1日目 郷ひろみ ©️文藝春秋

 しかし、ふと思い起こせば、ある時まで大晦日の夜なぞ、そもそも遊びに出歩いたりするものではなかった。

 クリスマスも終わり、暮れも押し迫ってきたあたりからすでに街角にひと気は薄れ、子供時分、いつも父親のお供で、27日には人形町の佃煮屋まで、年始に使う注文の品を取りに行っていたのでよく覚えているのだが、暮らしていた等々力から、目黒通りをまっすぐに進み、清正公前を左折し、三田、新橋、銀座、日本橋と抜けて行くと、毎年毎年、同じように、開いている店などほとんどないような静かな冬景色だったことを、今でも思い出す。

 大晦日の夜は家族でレコード大賞、紅白歌合戦、ゆく年くる年を観て新年を迎えるのが、一種恒例の行事であった。サラリーマン家庭ではそれが一般的だったのではなかろうか。

 夜中に電車が動いていたかも知れないにせよ、それは初詣に向かう善男善女の為のものであって、遊びに繰り出そうにも、やっている場所などほとんどなかった筈だ。